無くならない高齢者を狙う詐欺
先日、札幌市で架空請求はがきが急増しているとの報道がなされました。
架空請求はがきとは、実在しない機関が「訴訟最終告知のお知らせ」などのタイトルで内容不明の架空の料金を支払うよう求めるはがきです。
はがきには、裁判用語や法律用語のような文字が並びますが、弁護士が見れば即座におかしな記載内容であることが分かります。
しかし、このような架空請求はがきに不安を煽られ、つい現金を送ってしまったなどの被害が相次いでいます。
札幌市の消費生活相談で架空請求はがきの相談をした相談者のうち、4割近くが60代以上とのことです。
架空請求詐欺の他、オレオレ詐欺や還付金詐欺、金融商品等取引名目の詐欺などの「特殊詐欺」全体で見ると、被害者のうちの75.7%が65歳以上の高齢者というデータもあります。オレオレ詐欺に至っては、被害者のうち96.8%が高齢者となっています。
昔から高齢者を狙う詐欺は存在しましたが、現代においても高齢者の詐欺被害は無くならず、逆に新たな手口の詐欺が出現しているという実情があります。
「私が詐欺なんて遭うはずがない。」と主張する強気な方もいらっしゃいますが、詐欺は非常に巧妙な手口のものがあり、他方で、人間は高齢になれば誰しも判断能力が鈍るものです。強気だった方が高額の詐欺被害に遭うことは珍しくありません。
被害に遭ってからの対応では遅すぎる
特殊詐欺などの悪質な詐欺被害について共通して言えることは、被害に遭った後に被害回復を図るのは非常に困難であるということです。
何故ならば、特殊詐欺を行う犯罪者は、犯罪であることを承知の上で足が付かないように対策を練り、騙し取った金銭を用意周到に確保してしまうからです。
もちろん警察の捜査によって犯人が逮捕されることもありますが、逮捕されたとしても、被害弁償をする金銭を犯人がもはや保有していないという恐れが大きいです。
したがって、高齢者が実際に特殊詐欺の被害に遭ってから対応するというのでは遅く、被害に遭う前に、しっかりと対策を立てておくことが極めて重要と言えます。
高齢者の詐欺被害を防ぐために家族信託の活用を考える
それでは、事前対策としてどのような方法が考えられるでしょうか。
例えば、振り込め詐欺防止のための機能の付いた電話機を用いるということも、一つの対策方法でしょう。
しかし、電話の機能だけであらゆる詐欺への対策とするのは難しいと思われます。
高齢者の詐欺被害を防ぐため、昨今注目されている対策方法の一つが「家族信託」という方法です。
家族信託とは、信頼する家族に対して財産の管理を任せることです。
口約束で任せるものではなく、正式に家族信託についての契約書を取り交わします。どのような行為を託すのかということも、その契約書の中で定めることができます。
また、全ての財産を家族に任せなければならないわけではなく、一部の財産だけの管理を任せるという内容にすることも可能です。家族信託の対象外とした財産については、これまでどおり自分で管理することができます。
さらに、家族がきちんと管理してくれるか不安な場合は、弁護士などの専門家を「信託監督人」に設定し、その専門家に監督してもらうこともできます。
以上のような家族信託を活用することで、判断能力が低下してきた高齢者が特殊詐欺の標的になったとしても、管理を託された家族がしっかりと守ることができます。
これまでコツコツと貯めてきた資産を守るため、親が詐欺被害に遭うことを防ぐため、対策方法の一つとして、家族信託をご検討ください。
当事務所では、家族信託や成年後見に関するご相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。