解雇の種類とポイント
従業員に度重なる勤務態度の不良などがあった場合、経営者としては解雇も視野に入れる場合があると思います。
しかし、解雇にも幾つか種類があります。
また、解雇の手続きは一般的に考えられているほど容易なものではありません。
解雇手続きの種類と、経営者の方が注意すべきポイントをご説明します。
普通解雇
通常「解雇」という場合、普通解雇を指します。
解雇理由としては、従業員の能力不足や勤務態度の不良を理由とするものが多いです。
普通解雇が無効とならないためには、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること」が必要です。
しかし、この要件は、かなりハードルが高いです。
かなりの能力不足、かなりの勤務態度不良があったとしても、いきなり解雇手続をとれば、無効となるおそれが非常に大きいです。
指導や注意などを経ずに、即解雇をとっている場合、解雇無効を主張される可能性が非常に高くなります。
大事なのは、段階を踏むことです。
具体的には、注意・指導を繰り返して改善の機会を与えたり、場合によっては配置転換を行って他の仕事で活躍する機会を与えるなどした上で、それでも改善されない場合に初めて、解雇という最終手段をとる、という手順を踏むことです。
整理解雇
整理解雇も普通解雇の一種ですが、会社の経営上の理由によるものをいいます。
会社の業績悪化による人員削減などが典型的なものです。
人員削減の必要性、解雇回避努力義務、解雇対象者選定の合理性、協議等の解雇手続の妥当性が「整理解雇の4要件」と呼ばれるものであり、この4要件を基準に、整理解雇が有効なものか否かが判断されます。
人員を減らす必要があるかどうか、解雇を避ける努力をしたかどうか、解雇の対象者を不合理な理由で選んでいないかどうか、従業員への説明や協議など、解雇にあたって妥当な手続きをとったかどうか。この4点がチェックされます。
もっとも、4要件といっても、4つそれぞれの有る無しをチェックするのではなく、それぞれがどの程度満たされているかを考慮した上で、総合的に判断します。
4つのうち1つでも欠けていたら整理解雇は無効というわけではなく、他の3つの要件を十分に満たしていれば整理解雇が有効になる可能性があるということになります。
ただし、1つが完全に欠けている場合、いくら他の3つの要件が十分に満たされていたとしても、整理解雇は無効と判断されてしまう可能性が高いでしょう。
したがって、4要件全てを満たすように留意することがやはり望ましいです。
懲戒解雇
まず、懲戒解雇は就業規則に根拠となる規定を設けておく必要があります。
これは、減給処分などの他の懲戒処分についても同様です。
また、就業規則に規定を設けておくだけではなく、その内容を従業員に周知しておかなければなりません。
なお、懲戒解雇とする場合、退職金も不支給とすることが多いですが、退職金不支給についてもあらかじめ就業規則に定めておく必要があります。
次に、普通解雇同様、懲戒解雇が相当であるということが必要ですが、普通解雇以上にハードルが高くなります。
普通解雇でもかなりハードルが高いので、それ以上にハードルが高い懲戒解雇は、よっぽどの事情が無い限り、懲戒解雇することは困難ということになります。
想定されるのは、業務上横領や社内での傷害行為などの犯罪行為です。 これに対し、明確な職務命令違反があったとしても、事情によっては懲戒解雇ができない可能性があります。