離婚問題・交通事故・企業法務(顧問契約等)に強い、札幌とくみつ法律事務所


後見・家族信託の法律コラム

親族が認知症で不動産を売却できない時の対処法

2019年05月10日

社会問題となっている空き家問題

現在、日本全国の空き家は、住宅全体の10パーセント強である約850万戸にも上ると言われています。

街中を歩いていても空き家を見かけることが増えたように思います。

空き家が急増している主な要因は少子高齢化と言われていますが、空き家に至る具体的な経緯として思い浮かぶもの言えば、相続の場面だと思います。

誰も住まなくなった不動産について、遺産分割などの相続手続きが上手く進まず、そのままにされた結果、空き家に至るというようなケースです。

もっとも、他にも空き家に至る経緯として数多くあるケースが、認知症の発症による資産の凍結です。

不動産の持ち主が認知症を発症し、判断能力が著しく低下した場合、不動産を売却することができなくなります。

そして、本人が施設へ入居したり、入院するなどして自宅が空き家になった後も、自宅を売却できない状態が続いてしまうのです。

 

成年後見制度の活用

このような事態に陥った時の解決法として考えられるのが「成年後見制度」というものです。

これは、判断能力が著しく低下してしまった本人に代わり、「成年後見人」という者が本人の資産を管理したり、処分したりする制度です。

また、施設への入居契約や、医療に関する契約など、成年後見人は本人に代わって契約手続きを行う権限も有します。

親族が認知症となり、不動産を売ることができなくなり、空き家となってしまった場合には、成年後見人を選任してもらうことを検討しましょう。

なお、昨今話題となっている「家族信託」は、判断能力が低下してしまう前に実行できる事前対策です。

したがって、判断能力が低下してしまった後では、原則として家族信託を用いることはできません。

 

成年後見人を選任してもらう大まかな流れ

成年後見人の選任については、家庭裁判所へ申立て手続きを行う必要があります。

本人はすでに判断能力が著しく低下した状態ですので、原則として、親族が家庭裁判所に申立て手続きを行います。

もっとも、申立書や財産目録、収支予定表等の作成、戸籍や登記されていないことの証明書等の関係資料の収集など、申立て手続きは一朝一夕に行えるものではありません。

そこで、弁護士が親族の代理人となって申立て手続きを行うことが考えられます。

また、成年後見人の候補者をその弁護士とすることも考えられます。

当事務所では、成年後見人の選任申立てについて初回無料相談を実施しております。まずはお気軽にご相談ください。

 

他にも成年後見人が必要となるケースは多くある

成年後見人が必要となるのは、不動産売却の場面だけではありません。

以下のようなケースでも、成年後見人の選任が考えられます。

・相続人の中に認知症の者がおり、遺産分割を完了できない。

・本人が認知症となり、定期預金の解約ができない。

・本人が認知症となり、保険金の請求手続きができないままとなっている。

・調停や訴訟手続きが必要なのに、本人が認知症で実行できない。

・認知症となった親族の財産管理を事実上行なっているが、負担が大きい。


ホームロイヤー契約とは?気になる費用は?

2018年12月11日

ホームロイヤーとはかかりつけ医のような弁護士のこと

「ホームロイヤー」という言葉を皆さんは聞いたことがあるでしょうか?

ホームロイヤーとは、簡単に言うと「ホームドクター」のような、かかりつけのお医者さん的存在の弁護士のことを言います。

内閣府によれば、高齢者の一人暮らしは年々増加しており、2015年時点で、65歳以上の方のうち、一人暮らしをしている男性は全体の13.3%、一人暮らしをしている女性は全体の21.1%となっています。

このように一人暮らしをされている高齢者の方は、医療・介護のことや財産管理のこと、詐欺や消費者被害のことなどについて特に不安を抱えていらっしゃることと思います。

また、定期的に誰かに見守ってもらいたいという気持ちも少なからず抱えていることと思います。

そこで、昨今では、このようなご要望に法律の専門家である弁護士が「ホームロイヤー」という形で対応するようになってきました。

ホームロイヤー契約では、定期的に弁護士がご本人と連絡をとり、法律相談にも乗るという「見守り契約」の形でサービスを提供するのが一般的です。

また、見守りだけでなく、財産の全部又は一部の管理を弁護士に任せる「財産管理契約」などをセットで依頼されることもあります。

 

財産管理や遺言、死後事務のことも相談できる

ホームロイヤー契約では、弁護士に定期的に見守ってもらうだけでなく、法律相談をすることができます。

財産管理のことや遺言・相続のこと、亡くなった後の葬儀のことなどを弁護士に相談することができます。

そして、このようなことを定期的に相談していく中で、財産管理も弁護士に任せたいということであれば、追加で依頼することができます。

また、自分が認知症になった時にはホームロイヤーの弁護士に財産管理や施設入所の契約のことなどを任せたいと言う場合には、「任意後見契約」という契約を締結することが考えられます。

「任意後見契約」とは、認知症などで判断能力が低下した場合に本人に代わって財産管理等を行う後見人となる者をあらかじめ定めておく契約です。

さらに、遺言書の作成を任せることや、自分が亡くなった後の葬儀や医療費等の支払いを依頼する「死後事務委任契約」を行うことも考えられます。

財産の管理や処分を弁護士ではなく家族に任せたい場合には、昨今話題となっている「家族信託契約」をその家族との間で取り交わすことが考えられます。

この家族信託についても、弁護士に協力してもらうことが考えられます。

以上のように、ホームロイヤーの活用の仕方は様々です。

ホームロイヤーに継続的に見守ってもらい、相談に乗ってもらうだけという選択肢もあれば、財産管理や任意後見も任せるという選択肢もあります。

重要なのは、不安や心配事を一人で抱え込まず、専門家にまずは相談だけでもしておくことです。

専門家に相談しながら、選択肢を広げることを検討すれば良いのです。

 

ホームロイヤー契約にかかる費用はどのくらい?

ホームロイヤーを弁護士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

継続的な契約ですので、やはり費用の部分が皆さん気になるところだと思います。

ホームロイヤー契約の契約内容にもよりますが、例えば、月に1回、電話で安否確認や法律相談を行う「見守り契約」の場合、月額1万円(税別)程度が一般的と思われます。

もちろん、安否確認や法律相談の頻度を変更し、費用もこれに応じた金額に変更するということも可能です。

見守り契約に加えて、弁護士に財産の全部又は一部の管理を任せる「財産管理契約」も行う場合、財産の規模などによりますが、おおよそ月額3万円(税別)〜月額5万円(税別)程度の費用になります。

認知症等になった時に後見人となってもらえるように、「任意後見契約」も行うことが考えられますが、この場合の費用も財産管理と同程度の相場になります。

ただし、任意後見の場合、任意後見人が活動をするには家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要となり、この任意後見監督人についての費用も発生することになります(任意後見監督人の報酬については、家庭裁判所が決定します)。

さらに、「死後事務委任契約」も行う場合、おおよそ30万円(税別)程度の費用が別途発生することになります。

このように見ると色々と費用がかかってしまうように思えますが、どこまでのサービスを弁護士に依頼するかは選ぶことができます。

最も危険なのは、不安や心配事をそのまま放置しておくことであると思います。

まずは「見守り契約」でホームロイヤーに継続的に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。


高齢者の詐欺被害を防ぐための家族信託の活用

2018年08月28日

無くならない高齢者を狙う詐欺

先日、札幌市で架空請求はがきが急増しているとの報道がなされました。

架空請求はがきとは、実在しない機関が「訴訟最終告知のお知らせ」などのタイトルで内容不明の架空の料金を支払うよう求めるはがきです。

はがきには、裁判用語や法律用語のような文字が並びますが、弁護士が見れば即座におかしな記載内容であることが分かります。

しかし、このような架空請求はがきに不安を煽られ、つい現金を送ってしまったなどの被害が相次いでいます。

札幌市の消費生活相談で架空請求はがきの相談をした相談者のうち、4割近くが60代以上とのことです。

架空請求詐欺の他、オレオレ詐欺や還付金詐欺、金融商品等取引名目の詐欺などの「特殊詐欺」全体で見ると、被害者のうちの75.7%が65歳以上の高齢者というデータもあります。オレオレ詐欺に至っては、被害者のうち96.8%が高齢者となっています。

昔から高齢者を狙う詐欺は存在しましたが、現代においても高齢者の詐欺被害は無くならず、逆に新たな手口の詐欺が出現しているという実情があります。

「私が詐欺なんて遭うはずがない。」と主張する強気な方もいらっしゃいますが、詐欺は非常に巧妙な手口のものがあり、他方で、人間は高齢になれば誰しも判断能力が鈍るものです。強気だった方が高額の詐欺被害に遭うことは珍しくありません。

 

被害に遭ってからの対応では遅すぎる

特殊詐欺などの悪質な詐欺被害について共通して言えることは、被害に遭った後に被害回復を図るのは非常に困難であるということです。

何故ならば、特殊詐欺を行う犯罪者は、犯罪であることを承知の上で足が付かないように対策を練り、騙し取った金銭を用意周到に確保してしまうからです。

もちろん警察の捜査によって犯人が逮捕されることもありますが、逮捕されたとしても、被害弁償をする金銭を犯人がもはや保有していないという恐れが大きいです。

したがって、高齢者が実際に特殊詐欺の被害に遭ってから対応するというのでは遅く、被害に遭う前に、しっかりと対策を立てておくことが極めて重要と言えます。

 

高齢者の詐欺被害を防ぐために家族信託の活用を考える

それでは、事前対策としてどのような方法が考えられるでしょうか。

例えば、振り込め詐欺防止のための機能の付いた電話機を用いるということも、一つの対策方法でしょう。

しかし、電話の機能だけであらゆる詐欺への対策とするのは難しいと思われます。

高齢者の詐欺被害を防ぐため、昨今注目されている対策方法の一つが「家族信託」という方法です。

家族信託とは、信頼する家族に対して財産の管理を任せることです。

口約束で任せるものではなく、正式に家族信託についての契約書を取り交わします。どのような行為を託すのかということも、その契約書の中で定めることができます。

また、全ての財産を家族に任せなければならないわけではなく、一部の財産だけの管理を任せるという内容にすることも可能です。家族信託の対象外とした財産については、これまでどおり自分で管理することができます。

さらに、家族がきちんと管理してくれるか不安な場合は、弁護士などの専門家を「信託監督人」に設定し、その専門家に監督してもらうこともできます。

以上のような家族信託を活用することで、判断能力が低下してきた高齢者が特殊詐欺の標的になったとしても、管理を託された家族がしっかりと守ることができます。

れまでコツコツと貯めてきた資産を守るため、親が詐欺被害に遭うことを防ぐため、対策方法の一つとして、家族信託をご検討ください。

当事務所では、家族信託や成年後見に関するご相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

 


「家族信託」をご存知ですか?

2018年06月08日

「家族信託」って何?

皆さんは「家族信託」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「終活」という言葉が流行していますが、その終活の方法の一つとして、「家族信託」という手法が最近注目を集めています。

「成年後見制度と比べて、家族信託は柔軟な対策ができる。」「家族信託で遺言としての機能も果たせる。」などの話を聞いたことがあるかもしれません。

それでは、そもそも「家族信託」とは一体何なのでしょうか。

 

家族信託は、信頼する家族へ財産を託すこと

「家族信託」とは、簡単に言うと、信頼する家族に対して自分の財産を託すことです。

家族に託すので、「家族信託」と言われています。

託す財産というのは、例えば、預貯金や不動産、株式などです。

「託す」と言っても、「任せたからね。」と口頭で伝えるだけではありません。

正式に家族信託についての契約書を取り交わすことになります。

どのような行為を託すのかということも、契約書の中できちんと定めることになります。

例えば、その財産の管理だけを任せるのか、売却などの処分も任せるのか、さらには資産運用まで任せるのか、託す内容について詳しく契約書の中で定めます。

 

 

家族信託はどういう時に利用するの?

では、家族信託が利用されるのはどういう場合でしょうか。

例えば、持ち家で一人暮らしをしている親が、将来、認知症等で判断能力が低下した時には、高齢者向け施設に入居する可能性があるというケースを考えてみましょう。

高齢者向け施設に入居する際には、親は自分の持ち家を売って施設の費用や医療費、介護費等に充てたいと考えています。

ところが、持ち家を売るべき状況になったとしても、認知症発症によりすでに判断能力が低下していれば、家の売却手続きを行うことはできません。

親の持ち家ですので、子が代わりに売却手続きをすることもできません

成年後見人の選任を裁判所に申し立てて対応するという方法もありますが、手続きの手間や時間、費用の負担が家族に生じる上に、家族以外の第三者(専門職)が成年後見人に選任される可能性もあります。

そこで、あらかじめ持ち家の管理や処分を信頼できる子に託す「家族信託」が有効な選択肢の一つとなります。

信託を受けた子は、親に代わって親の持ち家を売却することが可能になります。

そして、その売却代金から、親の生活や医療、介護等の費用を支払ってもらうように、子に管理を任せることができます。

このような家族信託の活用により、親は、自分が認知症になってしまった時も安心して暮らすことができます

また、子にとっても、実家の管理や処分をスムーズに行うことができるという大きなメリットがあります。

親には、「子を信頼しているけれども、自分が認知症になった後もきちんとやってくれるのか少し不安だな。」という気持ちもあるかもしれません。

その場合、家族信託契約の中で、子がきちんと財産管理等をしているのかを監督してくれる「信託監督人」を設定することもできます。

信託監督人には、家族信託に詳しい弁護士等の専門家を設定することが望ましいでしょう。

 

家族信託には遺言機能を持たせることもできる

ご説明した例はいわゆる認知症対策ですが、家族信託の活用方法のごく一例に過ぎません。

家族信託は認知症対策だけでなく、親が亡くなった後の遺言書としての機能を発揮することもできます。

親が亡くなると、通常、家族信託契約は終了し、子が親のために財産管理等をする任務は終了します。

家族信託の契約において、信託終了後に残った親の財産(これを「残余財産」と言います。)を誰に帰属させるのかという点を、あらかじめ決めておくことができるのです。

このように、家族信託契約に遺言書のような機能を持たせることもできるのです。

他にも、アパート経営をされている方の承継対策、相続対策としてのマンション建築、孫世代までの資産承継対策、さらにはペットの信託など、家族信託は様々なご要望に応えることができる魅力的なツールとなっています。

 

家族信託について是非ご相談ください

ご説明したとおり、家族信託は単なる口約束ではなく、正式に契約書を取り交わすことが必要となります。

もちろん、単に契約書を取り交わせばいいというだけではなく、どのような信託の形とするのか、その計画段階から慎重に吟味する必要があります。

したがって、家族信託を計画し、契約等の手続きを行うためには、家族信託に精通した専門家のサポートが不可欠となります。

また、家族信託の契約を取り交わした後も、信託監督人として弁護士等の専門家を置くことが望ましいケースもあります。

家族信託を計画し、実行していくには、専門家の力が必須となるのです。

当事務所の弁護士徳満は、成年後見や相続の案件を取り扱っているだけでなく、一般社団法人家族信託普及協会より家族信託専門士の認定も受けております。

成年後見や相続についてはもちろんですが、家族信託についても、ぜひ当事務所へご相談ください


成年後見人って何?成年後見制度のデメリットは?

2016年08月01日

成年後見人って何?成年後見制度のデメリットは?

認知症などによって判断能力が低下してしまった時、本人名義の不動産について処分できなくなる、施設入所などに関する契約を交わせなくなるなどの事態が生じ、親族が困ってしまうことがしばしばあります。

このような事態が生じた時、事後的に対応する制度が成年後見制度です。

成年後見制度とは、判断能力が著しく低下した本人のために、家庭裁判所の一定の監督のもと、後見人が身上監護と財産管理を行う制度のことを言います。

法定後見とも言います。

以下、成年後見制度の簡単な概要と、その難点についてご説明します。

 

成年後見制度の概要

上記の身上監護というのは、本人の生活の維持や医療、介護など、身上の保護に関する法律行為を行うことです。

法律行為とは、施設入所契約や介護契約の締結や解除のことをいいます。

その他、施設料や医療費の支払いなども行いますが、実際に身の回りの世話や介護を行うことは含まれません。

財産管理とは、本人の財産全体を把握し、本人のために管理や処分を行うことです。 後見人は、身上監護と財産管理に関して、包括的に代理権を持つことになりますが、判断能力の低下が著しいとまでは言えない場合、保佐、補助という制度もあります。

保佐・補助は、後見人が全面的に代理する後見の場合とは異なり、本人に一定程度の権限が残された上で、保佐人、補助人がそれを同意権や取消権によって監督・サポートするというシステムとなっています。

 

成年後見制度の難点

認知症に対する事後的な対応策である成年後見制度には、いくつかの難点がありますのでご説明します。

①後見人選任の手続きに時間を要する点

成年後見の開始を申し立てる準備の期間、申立後の手続きに要する期間を併せると、おおよそ3か月以上、後見人が選任されるまで期間を要します。

②申立手続きについての親族の負担

本人は判断能力が低下してしまった状態になっているため、親族による後見の申立てが原則となります。

したがって、親族に申立手続きの手間と費用を負担させることになってしまいます。

③後見人はあくまで家庭裁判所が選任する点

申立てを行う親族において、後見人候補者を挙げて、家庭裁判所に後見人の希望を伝えることはできますが、最終的に決定するのは裁判所になりますので、必ずしも希望が通るとは限りません。

④本人の意向を反映しきれない

後見人は本人のために財産管理・身上監護を行いますが、判断能力が低下した本人に意向確認をすることが困難である以上、細かく本人の意向に沿うということはできません。

以上の難点を解決する方法として、判断能力が低下する前に、本人自身があらかじめ自分の後見人を指名し、自分のライフプランを伝えることのできる意後見制度があります。 当事務所では、成年後見(法定後見)に関するご相談、任意後見に関するご相談のいずれについても承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。