子の親権についての判断基準
夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚成立の際には、親権者を指定することが必須となります。
財産分与や養育費、慰謝料などについては、取り決めが無いままであっても、離婚届を役所へ提出することによって協議離婚が成立します。
しかしながら、親権者の指定をしないまま離婚届を提出することはできないため、協議離婚であっても、親権者の指定が必須となります(民法819条1項)。
それでは、親権について話し合いで決まらない場合、裁判所ではどのような基準で親権者が定められるのでしょうか。
親権者の指定にあたっての判断要素
親権に関する判断は、様々な事情が総合的に考慮されてなされるものであり、何か一つの要素だけで決まるというものではありません。
それでは、どのような判断要素があるのでしょうか。
大きく分けて、親についての要素と、子についての要素に分かれます。
親についての要素は、健康状態や性格、経済力などの親の子を育てる能力、家庭内の環境、これまで子とどのように関わってきたか、実家からの援助などを挙げることができます。
子についての要素は、子の意思、現在の環境状況や環境の変化、年齢や発育状況、兄弟姉妹との関係などが挙げられます。
その他、子が幼い場合には母親優先の原則が働くこと、兄弟不分離の考えが一定程度考慮されることなどが言えます。
子の意思に関しては、15歳以上の子については必ず子の陳述を聴くこととなっています。 他方、10歳未満の子などの場合、子の意思を表明する能力が問題となる可能性があります。
家庭裁判所調査官による調査
離婚調停において子の親権が争われる場合、家庭裁判所調査官(以下、「調査官」といいます。)による調査が行われることになります。
調査官は、親の監護能力や、子の生活状況、子の意向などについて調査します。
調査方法は、まず、親の生活状況や収入状況、健康状態などを記載した「親権に関する陳述書」や、家の間取り等の資料を両当事者から提出してもらいます。
その上で、面接での調査、家庭訪問、子の学校や保育園の調査などを行います。
これらの調査を行った上で、調査官は、調査結果をまとめた調査報告書を作成します。
調査報告書は、親権の判断において重要な参考資料となります。