ドラマとは違う、理想的な離婚の仕方
離婚の手続きというと皆さんはどんなものを想像するでしょうか?
ドラマを観ていると、妻が夫に「離婚届にハンコを押しておいたから。あなたも押印して役所に出しておいてちょうだい。」などと告げているシーンがよく流れています。
「結婚するときは婚姻届を書いて役所に出しているのだから、離婚するときも離婚届を書いて役所に出すだけ」などというイメージを持っていないでしょうか?
確かに、夫婦でお互いが離婚届を書いて役所に提出すれば、離婚は成立します。
しかし、本当にそのまま離婚届を提出しても大丈夫でしょうか?
何も決めないで離婚届を提出した場合、その後に大変な思いをすることになるかもしれません。
例えば、平成28年度の厚生労働省の調査によれば、元夫から「現在も養育費を受けている」と回答した母子世帯の母親は24.3%にとどまっています。
他方で、元夫から「養育費を受けたことがない」と回答した母子世帯の母親は56%にのぼります。
半分以上の母子世帯が、元夫から一度も養育費を受けることができていないのです。
このような事態を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
養育費だけ口約束をしておけば大丈夫でしょうか?
口約束では不安なので自分たちで念書を作っておけばいいのでしょうか?
そもそも何をどこまで取り決めておくべきなのでしょうか?
離婚手続きの際に見落としてはいけないポイント
色々な考え方があると思いますが、離婚の際に考えなければならない基本事項として、①子どものこと、②お金のこと、③環境(特に住む場所)のこと、の3つが挙げられます。
①子どものこと
未成年の子がいる場合、親権を必ず決めなければなりません(逆に言うと、親権さえ決めれば離婚届の提出は制度上可能です。このようなシステムは見直されるべきではないかと思います)。
しかし、離婚後、親権者ではない方の親が、子どもと今後どのように面会交流を行うのかという点も見落としてはいけません。
抽象的な定め方をすることも多いですが、面会交流の点を頭に入れておくことが大事です。
②お金のこと
実際上、最も大きな問題がお金のことです。
大きく分けると、養育費、財産分与、慰謝料の3点です。
特に養育費は、将来に渡って月々支払ってもらうことが通常であるため、金額や内容をどうするのか、いつまで支払ってもらうのか、どのような手続きで取り決めるのかなど、慎重に検討する必要があります。
財産分与は、事案にもよりけりですが、計算が複雑になることが多い項目です。
あまり知られていない基本的な考え方が、財産分与は、個別の財産ごとに計算するのではなく、夫婦それぞれの財産全体を比較して計算するという点です。
「自宅を半分に分けないといけないのですか」「この生命保険はもらえますか」などのご相談をよく頂きますが、個別の財産ごとに判断するのではなく、財産分与の金額は、あくまで財産全体を比較して計算します。
財産分与に似た考え方の制度として、年金分割というものがあります。これも見落とさないように注意が必要です。
慰謝料は、ドラマやワイドショーなどでよく耳にするかもしれませんが、離婚の際に必ず発生するというものではありません。
不貞行為など、慰謝料の発生原因がある場合に検討することになります。
ただ、慰謝料の発生原因がなくとも、解決金などの形で、交渉によって事実上金銭を取得できることもあります。
③環境のこと
離婚後の環境、特に住む場所をそれぞれどうするかという点は、しばしば大きな問題になります。
どちらが家を出るのか、実家に住むのかマンションを借りるのか、子どもの学校はどうするのかなど、環境の問題は生活に直結するため、見過ごせない問題です。
問題となりやすい一つのケースとして、住宅ローンの残っている自宅を所有している場合が挙げられます。
住宅ローンをどうするのか、自宅を売るのか残すのか、残すのであれば誰が住むのかなど、様々な問題が生じます。
自宅の価値よりも住宅ローン残額の方が大きいいわゆるオーバーローン状態である場合や、夫婦それぞれが自宅の共有持分を保有している場合、夫婦で連帯債務を負っている、あるいは他方が連帯保証人となっているなどの場合、問題はより一層複雑になります。
離婚条件の判断や手続きの選択は難しい
以上のとおり、離婚の手続きは「離婚届にハンコを押しておいたから。」などと簡単に済ませるようなものではなく、見落としてはいけない様々なポイントがあることをお分かり頂けたかと思います。
そして、それぞれが複雑で難しいものであるということがイメージできたかと思います。
また、それぞれの内容だけでなく、どのような手続きで取り決めれば良いかという判断も難しいものです。
離婚の手続きは大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがありますが、手続きの特徴を正確に踏まえた上で方針を選択するには、専門的な知識を要します。
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