まずは遺言書があるか否かを確認する
遺産分割の協議を始める前に、亡くなった方の遺言書が無いかどうかをまずは確認する必要があります。
有効な遺言書が存在する場合、その遺言書で指定された内容で遺産分割がなされることになるためです。
相続人全員の同意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割を行うことも可能ですが、相続人のうちの一人でも同意が得られなければ、やはり遺言書どおりに分割されることになります。
また、遺言書の内容を実現する遺言執行者が指定されている場合、相続人全員が遺言内容と異なる処分を求めているとしても、遺言執行者は遺言の内容どおりの執行をすることができます。
遺言書が公正証書で作られた場合(公正証書遺言)、相続人の方は遺言書の有無を公証役場で調べてもらうことができます。
日本全国の公証役場を対象に調べてもらうことができますので、活用を検討すると良いでしょう。
なお、遺言者が亡くなる前は、遺言者本人でなければ検索することができません。
遺言書が自宅などにおいて自筆で作られた場合(自筆証書遺言)、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所に「検認」を申し立てなければなりません。封書の場合は、開封しないまま検認手続きを行わなければなりません。
検認とは、相続人に対して遺言のことを知らせるとともに、遺言書の状態や内容を裁判所で確認し、遺言書の偽造を防ぐ手続きです。
遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありませんので、ご注意ください。
法律で定められている相続割合を確認
遺言書が無く、相続人の間で遺産分割協議を行う場合、まずは法律で定められている相続割合を確認します。これを法定相続分と言います。
法定相続分は、概ね以下のように定められています。
①共同相続人が配偶者と子である場合
配偶者は2分の1、子は2分の1になります。
子が複数いるときは、嫡出子か非嫡出子かに関わらず、各自の相続分は等しいものとされます。
②共同相続人が配偶者と直系尊属である場合
配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1になります。
直系尊属が複数いるときは、各自の相続分は等しいものとされます。
③共同相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合
配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1になります。
兄弟姉妹が複数いるときは、各自の相続分は等しいものとされますが、この中に父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいるときは、その相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1とされます。
寄与分とは?特別受益とは?
法定相続分が絶対的な基準かというと、そうとも限りません。
法定相続分の割合が修正される典型的なものとして、寄与分というものがあります。
寄与分とは、相続人の中に、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人がいるときに、その相続人には法定相続分以上の財産を取得させる制度です。
もっとも、寄与分は簡単に認められるものではなく、身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える特別の貢献でなければならないとされています。
寄与の類型としては、事業従事型、財産出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型などがあります。
法定相続分が修正される制度としては、特別受益というものもあります。
相続人に対して遺贈や一定の生前贈与がなされている場合に、これを特別受益といい、この特別受益分を調整して相続割合を決める制度です。
生前の贈与について問題となることが多いですが、生前贈与の全てが特別受益に該当するわけではありません。
例えば、不動産の贈与など、生計の基礎として役立つような贈与は特別受益に含まれますが、他方で、親族間の扶養としての金銭援助にとどまるような贈与は特別受益に当たらないとされています。
相続割合以外の問題が生じることも多い
相続割合について説明してきましたが、遺産分割において生じる問題は残念ながら相続割合だけとは限りません。
生前の財産の動きに使途不明金がある場合、遺産の範囲に争いがある場合、相続人の中に認知症の方がいる場合、相続人の中に音信不通の方がいる場合など、遺産分割では様々な問題が生じます。
また、相続人間で話し合いをするだけでも精神的に疲弊することがあります。
このような場合、一人で問題を抱えることなく、専門家である弁護士にまずはお気軽にご相談ください。
自分の代理人になってもらい、遺産分割を全面的に任せることのできる専門家は弁護士だけです。
当事務所では、遺言や相続に関する初回無料相談を実施しておりますので、どうぞご活用ください。