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遺言・相続の法律コラム

遺産分割に時効はない?相続手続を放置してはいけない理由

2024年06月27日

※2024年6月現在の法律に基づくコラムです。

相続に関連する様々な期間制限がある

相続の発生後、遺産分割協議をすることなく長期間が経過しているという事案をしばしば見かけることがあります。

確かに遺産分割をすること自体には時効はありません。長期間が経過した後であっても遺産分割協議をすること自体は可能です。

しかしながら、手続きを放置することにより様々な不利益を被るリスクがあります。

その理由として、まず、遺産分割自体に期間制限はなくとも、以下のような相続に関する様々な期間制限が設けられていることが挙げられます。

①相続放棄

借金を相続したくないなどの理由で相続放棄を希望する場合、原則として相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。

②相続税の申告

相続財産等が基礎控除額を超えて相続税の申告が必要となる場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。

③遺留分侵害額の請求

遺言書や生前贈与により自分の遺留分が侵害されている場合、遺留分侵害額の請求をすることができますが、相続開始と侵害の事実を知った時から1年間行使しないときは、時効によって請求権が消滅してしまいます。

相続開始の時から10年を経過した時も、同様に消滅してしまいます。

④相続登記の義務化

令和6年4月1日から不動産の相続登記が義務化されたため、相続により不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

また、遺産分割により不動産を取得した相続人は、遺産分割成立から3年以内に相続登記をしなければなりません。

⑤不当利得返還等の請求

例えば、被相続人の生前に相続人の一人が被相続人の預貯金を私的に流用していたことなどを主張したい場合、不当利得返還請求という法律構成を取ることが考えられますが、私的流用を知った時から5年が経過するなどした場合には時効により請求できなくなってしまいます。

⑥特別受益や寄与分の主張

相続法の改正により、特別受益や寄与分の主張についても期間制限が設けられました。

原則として相続開始から10年が経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなります(もっとも、令和5年4月1日からしばらくの間は経過措置があるなど、例外もあります)。

 

時間の経過と共に状況が変化し、協議がより難しくなる

前述のとおり、相続に関わる様々な期間制限に注意しなければなりませんが、遺産分割を放置してはいけない理由は他にもあります。

それは、放置して時間が経過すると、状況が変化し、遺産分割の協議をすることがより困難になる恐れがあるということです。

例えば、子のいない被相続人が死亡し、当初は兄弟3人で遺産分割協議をすればよかったというケースを考えてみます。

時間の経過と共に相続人となっていた兄弟も死亡した場合、その妻や子らなどが新たに遺産分割協議に加われなければならなくなります。

つまり遺産分割協議書に署名押印しなければならない人数がどんどん増えて行く恐れがあるのです。

また、相続人の一人が高齢となり、認知症になったため、自ら遺産分割に参加できなくなるという事態が発生することも考えられます。

この場合、この相続人の代理人となってもらう成年後見人の選任を家庭裁判所に対して申し立てなければならなくなります。

さらに、相続人の一人が行方不明になるというようなことも実際にあります。

この場合、家庭裁判所に対して不在者財産管理人という者の選任を申し立てなければならなくなります。

 

放置せずに相続手続きの対応をすることが重要

以上のとおり、相続手続きや遺産分割を放置することにより、主張できたはずのことを主張できなくなるリスクや、手続きが非常に煩雑になってしまうリスクが生じます。

したがって、相続が開始した場合には、相続手続きを放置することなく遺産分割などの対応を進めていくことが重要になります。

そして、当事者同士では遺産分割を進めることが困難な場合、そのまま手続きを放置するのではなく、弁護士へ相談してみることをぜひご検討ください。


遠方に住む相続人がいる場合の遺産分割はどうすれば良い?

2023年02月02日

他の相続人が遠方にいるため協議が進まない場合

遺産分割の話し合いを行うときに、他の相続人が遠方に住んでいるということがあります。

北海道の相続について見れば、北海道は広いため、北海道内であっても各相続人が互いにかなり遠方であるということがしばしば起こります。

そして、複数の相続人が北海道外に住んでいるということも珍しくありません。

また、相続人同士が普段から連絡を取り合う関係性であれば、遠方であっても遺産分割協議を比較的しやすいかもしれませんが、遠方の上、疎遠な関係性であれば、協議が難航する可能性はかなり高くなります。

さらには、そもそも他の相続人と連絡が取れない、行方も分からないというケースもあります。

亡くなった被相続人が遠方で遺産の内容もよく分からない場合

亡くなった被相続人が遠方に住んでおり、遺産の内容すら自分にはよく分からないということもしばしばあります。

その場合、他の相続人と遺産分割の協議をする前に、場合によっては遺産の内容の調査をする必要も生じます。

また、相続の手続きをするには被相続人の戸籍を遡って収集する必要がありますが、戸籍の請求先は本籍地の役所となるため、本籍地が遠方であれば遠方の役所とのやりとりが必要となります。

さらに、相続人の一部が被相続人の近くに住んでおり、自らの寄与度を主張する場合や、生前や生後の被相続人の財産管理状況などに疑義が生じた場合、これらの点も相続争いの火種となるかもしれません。

遺産分割協議を放置すれば事態はより複雑になってしまう

以上のように、遠方であることが一つの要因となって遺産分割協議が難航するケースがあります。

しかしながら、遺産分割協議が放置されれば、相続人の一部が死亡して更なる相続が発生したり、相続人の一部が認知症になって協議ができなくなったりするなど、事態がより複雑になる恐れがあります。

したがって、遠方であっても遺産分割協議を放置するのではなく、解決に向けた手続きを進めるのが望ましいでしょう。

とはいえ、当事者間ではとても解決できないというケースも考えられます。

そのようなケースでは、専門家へ依頼することを検討するべきでしょう。

例えば、司法書士へ遺産分割協議書の書類作成を依頼するという方もいらっしゃいますが、書類作成だけでなく、代理人として全ての手続きを任せることができるのは弁護士だけです。

したがって、書類作成だけでなく、他の相続人との交渉窓口なども含め、全面的に専門家へ任せたいということであれば、依頼先は弁護士になります。

また、裁判所での調停や審判などの手続きをする場合も、代理人を任せられるのは弁護士だけであるため、やはり依頼者先は弁護士になります。

当事務所では相続に関する初回無料相談(営業時間外での相談など、無料対象外のケースもあります。)を実施していますので、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。


借金や不要な土地の相続を回避する方法

2020年03月27日

親や配偶者、兄弟が借金を抱えたまま亡くなったら

自分の親が亡くなったときに相続のことを頭に思い浮かべる方は比較的多いと思います。

それでは、自分の兄弟が亡くなったと、さらには、自分の叔父や叔母が亡くなったときに、相続のことを考えるでしょうか。

このような場合にも、自分が相続人になることがあるのです。

具体的には、自分の兄弟に子がおらず、親もすでに亡くなっている場合、相続人となります。

また、自分の叔父や叔母に子がおらず、叔父や叔母の親がすでに亡くなっており、自分の親もすでに亡くなっている場合、甥や姪である自分が相続人となります。

借金がある場合にはこれも相続の対象になるということになります。これを放置すれば、借金の全部又は一部を自分が返済しなければならないことになってしまうのです。

このような場合の対処法が、相続放棄という手続きです。

家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより、始めから自分が相続人ではなかったことになります。

相続放棄が認められれば、預貯金などのプラスの遺産を相続することができなくなりますが、借金などのマイナスの遺産を相続することも回避できるのです。

 

不要な土地にも固定資産税が発生する

借金の相続が無くとも、遺産は不要な土地だけというケースもしばしばあります。

例えば、遠方のよく知らない土地であるという場合や、ほとんど価値が無く、売却することも困難な土地であるという場合です。

このような場合であっても、一定額の固定資産税が土地には毎年発生し、これを負担し続けなければならないリスクが相続人に生じます。

そこで、相続放棄を行い、不要な土地を相続しないという対策が考えられます。

 

相続放棄をする場合の注意点

以上のように、借金や不要な土地の相続を回避するための方法として、相続放棄の方法が考えられますが、いくつか注意点があります。

最も注意すべきは、手続きの期限です。

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないとされています。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、通常、亡くなったことを知った時になりますので、期限はかなり短いと言えます。

もっとも、すでに3か月を過ぎてしまっているという場合にも、相続放棄が受理されるケースはございますので、まずは弁護士へご相談ください。

また、相続放棄の手続きをとれば、借金などの負債を放棄するだけでなく、預貯金などのプラスの財産も含めて全て放棄することになるため、プラスの財産だけ取得することはできない点に注意する必要があります。

さらに、借金を放棄できるという点についても、相続放棄の手続きをとったことで自動的に貸金業者等からの督促が止まるわけではありませんので、この点にも注意が必要です。

相続放棄の受理通知書のコピーを貸金業者等へ送付する方法などにより、相続放棄を行なったことを知らせる必要があります。

最後に、不動産については、その管理責任に注意する必要があります。

すなわち、相続放棄をした場合も、直ちに不動産の管理責任を免れるわけではないのです。

例えば、放置された古い空き家が倒壊するなどして第三者に損害を与えてしまった場合、損害賠償責任を負う可能性が生じるのです。


遺産分割の話し合いが進まない場合はどうすればいい?

2019年05月28日

遺産分割手続きがスムーズに進まない原因

「争続」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

「争族」とは、遺産分割の話し合いが上手くいかず、相続手続きが紛争化してしまったことを言います。

もっとも、遺産分割がスムーズに進まないのは、「争族」という紛争化したようなケースだけとは限りません。

争っているわけではないのに遺産分割が進まない、遺産分割が終わっていないというケースも多くあります。

例えば、次のようなケースが考えられます。

 

①相続人が疎遠、遠方、高齢

仲が悪いわけではないものの、他の相続人と疎遠になっていたり、他の相続人が遠方に住んでいたりするため、遺産分割がなかなか進まないというケースは多くあります。

また、相続人も高齢で施設に入っているなどの状態にあり、遺産分割の手続きを進めることが困難ということもしばしばあります。

特に相続人が兄弟である場合は、亡くなった被相続人と年齢があまり変わらないため、相続人がかなり高齢の方ばかりという状況になりやすいです。

さらには、相続人の中に認知症などで判断能力が著しく低下している方がいる場合、その方が遺産分割の手続きを行うことはできません。

その方の代わりに遺産分割手続きを行ってもらうため、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。

 

②相続人が多数

相続人が多すぎて話がまとまらないということも多くあります。

例えば、遺産分割ができないまま数年、あるいは数十年が経過したところ、その間に相続人も亡くなり、新たな相続人がどんどん増えていったということはよくあるケースです。

相続人が何十人もの人数になれば、遺産分割の協議を進めることはかなり難しくなるでしょう。

 

③簡単に分けられない遺産がある場合

例えば、遺産の中に不動産がある場合、相続人間でスムーズに分け方を決められないことがよくあります。

自宅不動産の分割についての協議が難航することは多くありますし、アパートなどの収益物件もあるとなれば遺産分割協議はさらに複雑になります。

 

遺産分割を進めるための方法

以上のような事情で遺産分割をなかなか進められない場合、どうすればよいでしょうか?

考えられる手続きとしては、家庭裁判所での調停という手続きがあります。

これは、家庭裁判所で遺産分割に関する話し合いをする手続きです。

調停では、相続人らが面と向かって直接話し合うのではなく、裁判所の調停委員という方々に間に入ってもらい、調停委員を通じて話し合うという形をとります。

調停でも話し合いがまとまらないということになれば、審判という手続きに移行し、裁判所が遺産分割について決定を下すことになります。

したがって、審判になる可能性を考慮し、調停においても有効な主張立証をすることを検討するのが望ましいです。

そのため、遺産分割調停を行うのであれば、弁護士を代理人として立てることを検討されることをお勧めします。

また、相続人間での協議は進まないが、専門家が介入すれば協議がスムーズに進む見込みが大きい場合、調停を使わずに、弁護士に代理人として協議を行ってもらうことも可能です。

なお、遺産分割協議や調停に関して相続人の代理人になることのできる専門家は弁護士だけです。

 

事前対策を考えるのであれば遺言書や家族信託の活用を

前述のとおり、争いがある場合はもちろんのこと、大きな争いが無くても遺産分割が進まないということは多くあります。

そこで、考えられる事前対策としては、やはり遺言書の活用です。

しっかりとした遺言書があれば、遺言者の意思が明確に示されることにより、相続人間での遺産分割がそもそも不要になります。

また、遺言書の内容どおりに手続きを進めてくれる遺言執行者を弁護士などの専門家に依頼しておけば、相続の手続きはさらにスムーズなものなります。

他に考えられる事前対策としては、昨今話題になっている「家族信託」の活用です。

家族信託とは、財産の管理や処分を信頼できる家族に託す契約です。

この家族信託には、財産管理を家族に託す機能だけでなく、本人が亡くなった後の財産の帰属先を決める遺言代用機能を持たせることも可能です。

遺産分割の長期化は相続人にとって大きな負担となりかねません。

そのような負担が発生しないように、できる限り遺言書や家族信託などの事前対策を検討しておきましょう。

 


遺言書作成の費用はいくらかかる?公正証書遺言とは?

2019年03月15日

 

遺言書作成を専門家に依頼した場合の費用

遺言書を作りたいと考えても、自分で作るのは不安と考える方が多いと思います。実際のところ、遺言書を自分で作ったにもかかわらず、形式や内容に問題があり、効力の無いものとされてしまうリスクはあります。

そこで、専門家に遺言書のことを相談しようという話になると思いますが、気になるのが費用です。

遺言書の作成を専門家に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

「専門家」と一言に言っても、どのような専門家に相談すればいいか分からないという方も多いと思います。

遺言書は、法的効力を持たせる書類になりますので、法律の専門家である弁護士は相談相手として適切といえます。

弁護士に遺言書の作成を依頼した場合に発生する弁護士費用ですが、当事務所では、10万円(税別)〜20万円(税別)程度を基準としております。

この基準を踏まえ、遺産の内容や遺言者の状態などの個別事情に基づき、費用を設定させて頂いております。

また、遺言書の内容をより確実に実現するため、遺言者の死後に遺言書の内容を実行してくれる遺言執行者を、弁護士にご依頼頂くことも可能です。

弁護士以外の専門家に頼めばもう少し安く済むという場合があるかもしれません。

しかしながら、言うまでもなく遺言書はとても重要な法的効力を持つものです。

また、遺言書は相続紛争を回避するために作成するという場合が多いと思われますが、相続紛争に介入することのできる専門家は弁護士だけです。

したがって、自分が信頼できる弁護士に遺言書を作成してもらい、遺言執行者になってもらうことも検討するのが望ましいでしょう。

 

 

 

公正証書遺言って何?

遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の方式があります。

公正証書遺言は、公証役場というところにいる公証人に作成してもらう遺言書になります。

自分で自筆により作成する自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言は公証人に作成してもらうため、形式を誤って遺言書が無効になることはまず無く、また、遺言書の原本が公証役場に保管されて安心できるという大きなメリットがあります。

公証役場で遺言書が保管されるため、自筆証書遺言の場合とは異なり、遺言者の死後に家庭裁判所で検認の手続きを行うことも不要になります。

しっかりとした遺言書を作り、隠されたり紛失されたりしないようにしておきたいという場合、公正証書遺言の方式で遺言書を作成するのが良いでしょう。

また、自分の死後に遺言書の内容を実現するように手続きを進めてもらうため、遺言書の中で遺言執行者を指定しておくとより安心です。

相続人が遺言書に従って手続きを進めなくとも、弁護士などの遺言執行者が代わりに遺言書の内容を実現してくれます。

なお、相続法の改正により、自筆証書遺言についても、法務局に遺言書の保管を申請することのできる制度が2020年に施行される予定です。

 

 

公正証書遺言を作る際にかかる費用

公正証書遺言の方式で遺言書を作る場合には、公証役場に支払う費用が発生します。

弁護士に依頼した場合、弁護士が遺言書案の作成や資料収集・調査、公証人とのやりとりなどを行ってくれますが、弁護士費用とは別に、公証役場の費用が発生します。

公証役場の費用として主なものは、遺言書作成に関する手数料です。

遺言書作成の手数料は、例えば大まかな例として、2500万円の遺産を一人の相続人が受け取る内容の遺言書を作る場合、2万3000円程度になります。

2500万円の遺産のうち1500万円は一人の相続人が、1000万円はもう一人の相続人が受け取るという内容の遺言書を作る場合は、4万円程度の手数料になります。

受け取る人の人数や遺産の金額によって算出されますが、例としてはこのようなイメージになります。

また、祭祀主宰者の指定を行う場合には1万1000円を加算する、公証役場以外に公証人が出張する場合には日当・実費が発生するなどの費用の発生が考えられます。

 

以上、遺言書作成に発生する費用について概要をご説明しましたが、総額として具体的にどのくらいの費用になるのかはやはり事案によりますので、まずはお気軽にご相談ください。

 


遺産分割での相続割合はどのようにして決まる?

2019年01月18日

まずは遺言書があるか否かを確認する

遺産分割の協議を始める前に、亡くなった方の遺言書が無いかどうかをまずは確認する必要があります。

有効な遺言書が存在する場合、その遺言書で指定された内容で遺産分割がなされることになるためです。

相続人全員の同意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割を行うことも可能ですが、相続人のうちの一人でも同意が得られなければ、やはり遺言書どおりに分割されることになります。

また、遺言書の内容を実現する遺言執行者が指定されている場合、相続人全員が遺言内容と異なる処分を求めているとしても、遺言執行者は遺言の内容どおりの執行をすることができます。

遺言書が公正証書で作られた場合(公正証書遺言)、相続人の方は遺言書の有無を公証役場で調べてもらうことができます。

日本全国の公証役場を対象に調べてもらうことができますので、活用を検討すると良いでしょう。

なお、遺言者が亡くなる前は、遺言者本人でなければ検索することができません。

遺言書が自宅などにおいて自筆で作られた場合(自筆証書遺言)、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所に「検認」を申し立てなければなりません。封書の場合は、開封しないまま検認手続きを行わなければなりません。

検認とは、相続人に対して遺言のことを知らせるとともに、遺言書の状態や内容を裁判所で確認し、遺言書の偽造を防ぐ手続きです。

遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありませんので、ご注意ください。

 

法律で定められている相続割合を確認

遺言書が無く、相続人の間で遺産分割協議を行う場合、まずは法律で定められている相続割合を確認します。これを法定相続分と言います。

法定相続分は、概ね以下のように定められています。

 

①共同相続人が配偶者と子である場合

配偶者は2分の1、子は2分の1になります。

子が複数いるときは、嫡出子か非嫡出子かに関わらず、各自の相続分は等しいものとされます。

 

②共同相続人が配偶者と直系尊属である場合

配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1になります。

直系尊属が複数いるときは、各自の相続分は等しいものとされます。

 

③共同相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合

配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1になります。

兄弟姉妹が複数いるときは、各自の相続分は等しいものとされますが、この中に父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいるときは、その相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1とされます。

 

寄与分とは?特別受益とは?

法定相続分が絶対的な基準かというと、そうとも限りません。

法定相続分の割合が修正される典型的なものとして、寄与分というものがあります。

寄与分とは、相続人の中に、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人がいるときに、その相続人には法定相続分以上の財産を取得させる制度です。

もっとも、寄与分は簡単に認められるものではなく、身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える特別の貢献でなければならないとされています。

寄与の類型としては、事業従事型、財産出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型などがあります。

法定相続分が修正される制度としては、特別受益というものもあります。

相続人に対して遺贈や一定の生前贈与がなされている場合に、これを特別受益といい、この特別受益分を調整して相続割合を決める制度です。

生前の贈与について問題となることが多いですが、生前贈与の全てが特別受益に該当するわけではありません。

例えば、不動産の贈与など、生計の基礎として役立つような贈与は特別受益に含まれますが、他方で、親族間の扶養としての金銭援助にとどまるような贈与は特別受益に当たらないとされています。

 

 

相続割合以外の問題が生じることも多い

相続割合について説明してきましたが、遺産分割において生じる問題は残念ながら相続割合だけとは限りません。

生前の財産の動きに使途不明金がある場合、遺産の範囲に争いがある場合、相続人の中に認知症の方がいる場合、相続人の中に音信不通の方がいる場合など、遺産分割では様々な問題が生じます。

また、相続人間で話し合いをするだけでも精神的に疲弊することがあります。

このような場合、一人で問題を抱えることなく、専門家である弁護士にまずはお気軽にご相談ください。

自分の代理人になってもらい、遺産分割を全面的に任せることのできる専門家は弁護士だけです。

当事務所では、遺言や相続に関する初回無料相談を実施しておりますので、どうぞご活用ください。


相続放棄の手続きの流れや費用

2018年12月05日

相続放棄が必要になることは誰にでもありうる

「相続放棄」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。

相続放棄とは、相続人が遺産の相続を放棄することであり、相続放棄をすることにより、その方は初めから相続人でなかったことになります。

相続放棄の手続きは家庭裁判所に対して行うことになりますが、相続放棄の手続きが必要になることは誰にでも起こり得ます。

決して一部の特別な人だけが行う手続きではありません。

相続放棄のご相談としては、以下のようなケースがあります。

・兄弟の一人が亡くなったが、相続する気はないので、相続放棄をしたい。

・亡くなった親や兄弟に借金がある模様なので、相続放棄したい。

・両親が昔離婚したが、長年会っていない親が借金を抱えたまま亡くなったので、相続放棄したい。

・他の相続人と一緒に相続放棄をしたい。

亡くなった方に借金があるので放棄したいというケースだけでなく、相続人として関わる気はないという理由で相続放棄をするケースも多くあります。

重要なのは、相続放棄をしない限り、相続人は相続人の地位から逃れることができないという点です。

亡くなった方と長年関わっていない場合であっても、遠方に住んでいる場合であっても、相続放棄をしない限り、相続人は、相続人としての責任や負担を負うことになります。

 

 

 

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄の手続きの流れをご説明します。

相続放棄は、家庭裁判所へ申述書や必要書類を提出することにより行います。

まず重要なのが、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に提出しなければならないという点です。

「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、通常、被相続人の方が亡くなったことを知ったときを言いますが、例外もあります。

相続財産が全くないと信じ、かつ、そのように信じたことにつき相当な理由がある場合などです。

もっとも、原則としては、とても短い期限となっていますので、相続放棄を検討する場合、速やかに対応を開始されることをお勧めします。

速やかな対応をお勧めする理由として、必要書類である戸籍や住民票の収集に一定程度の時間を要するという事情があります。

特に戸籍については、被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍を提出しなければならない場合など、収集するのに時間を要するケースが多くあります。

また、必要書類の収集と同時に、相続放棄の申述書を作成する必要があります。

相続放棄の申述書を作成するにあたって注意しなければならないのは、被相続人が亡くなってから長期間が経過している場合です。

このような場合、なぜ相続放棄の期限が過ぎていないと言えるのかなどの点を説明しなければなりません。

申述書と必要書類が揃いましたら、家庭裁判所へ提出することになります。

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出することになります。

遠方の家庭裁判所ということも多いですが、この場合、郵送で対応することになります。

申述書の提出後、通常、一定期間経過後に家庭裁判所から申述をした方に対して、照会書が届きます。

これは、相続放棄の意思や、亡くなったことを知ったときの状況などについての質問文書になります。

これについては、申述書との矛盾が生じないように記載するなどの注意が必要になります。

なお、照会書の他に、事案によっては家庭裁判所から追加資料の提出などの対応を求められることもあります。

照会書を家庭裁判所へ返送した後、家庭裁判所において相続放棄の受理が決まれば、相続放棄を受理したという通知書が届きます。

これで相続放棄の手続きは完了となります。

 

 

 

相続放棄の手続きにかかる費用

相続放棄の費用についても、皆さんが気になる部分だと思います。

まず、必要書類である戸籍や住民票を収集するのに実費がかかります。

取得が必要な通数にもよりますが、おおよそ数千円程度になります。

次に、裁判所に申述をする際に、印紙代(手数料)と切手代が発生します。

印紙代は申述人1人につき800円になります。

切手代は裁判所によって異なりますが、例えば札幌家庭裁判所の場合は、平成30年12月現在で246円になります。

ご自身で手続きを行う場合は、相続放棄にかかる費用は概ね以上になります。

弁護士に依頼し、相続放棄の手続きを代わりに行ってもらう場合、当事務所では1件につき5万円(税別)の手数料となっております。

もっとも、例えば、兄弟3人で相続放棄をするなど、複数の相続人の方から同時に相続放棄の手続きをご依頼頂く場合には、1件あたりの手数料を割り引かせて頂けます。

以上を見ると、弁護士への依頼費用が最も高額であるため、自分で相続放棄の手続きを行うのが得策のように思えるかもしれません。

しかしながら、前述のとおり、必要書類である戸籍の収集が複雑かつ大変な作業になることがあります。

また、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月を過ぎている場合には、相続放棄の要件を例外的に満たすことを家庭裁判所に示さなければなりません。

したがって、専門家に任せることを検討して損は無いでしょう。

そして、相続放棄の手続きについて代理人となってもらえるのは弁護士だけですので、相談先としては弁護士をお勧めします。