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離婚問題・慰謝料の法律コラム

婚姻費用って何?婚姻費用の金額はどうやって決める?

2016年09月13日

婚姻費用って何?婚姻費用の金額はどうやって決める?

「婚姻費用」という言葉をご存知でしょうか。おそらくあまり聞き慣れない言葉だと思います。 しかしながら、婚姻費用は、離婚問題の解決にあたってとても重要なポイントとなることが少なくありません。

婚姻費用とは何か、婚姻費用の金額はどうやって決まるのか、婚姻費用に関する法的手続きにはどのようなものがあるのか。

これらを知ることは、一筋縄ではいかない離婚問題に立ち向かうにあたって非常に重要です。

 

婚姻費用って何?なぜ重要?

婚姻費用とは、夫婦が別居中、夫婦や子どもの生活費などの、婚姻生活を維持するために必要となる費用のことを言います。

夫婦が同居している間は、いわゆる「夫婦の財布は一つ」なので、生活費の分担の問題は生じにくいです。しかし、夫婦が別居するに至ったという場合、婚姻費用を夫婦間でどのように分担するかという問題がしばしば発生します。

夫の方が妻よりも多くの収入を得ており、また、妻の方で子どもを養育しているというケースが多いですが、この場合、夫から妻に対して、婚姻費用として一定の金額を毎月支払うということになります。

ポイントは、別居が解消するまで、あるいは離婚が成立するまでの間、毎月発生し続けるという点です。

毎月発生し続けるということは、互いの毎月の生活に大きな影響を及ぼし続けることになります。

したがって、妻側からすれば、婚姻費用を適切に得られなければ、自分の生活や子どもの養育が危機に晒されてしまう恐れがあります。

他方、夫側からすれば、婚姻費用の支払金額が過度に大きければ、毎月の自分の生活が圧迫され続けるということになります。

離婚問題は、夫婦が別居している状況で、協議や調停が行われることが少なくありません。

そうすると、離婚問題が解決するまでの間、婚姻費用は毎月発生し続けることになります。

したがって、婚姻費用が支払われているのか否か、支払金額がいくらになるのかはとても重要なポイントとなるのです。

事案によっては、婚姻費用が、離婚問題の交渉に大きく影響を及ぼすこともあります。

 

婚姻費用はどうやって決める?婚姻費用を決める手続きとは?

婚姻費用は、養育費と同じく、裁判所が公開している算定表を参照し、金額を決定することが多いです。

金額が決まるポイントとしては、夫婦それぞれの年収と、子どもの人数・年齢です。

夫婦間の年収差が大きければ大きいほど、婚姻費用としての支払金額も大きくなります。 また、子どもの人数が多いければ多いほど、必要となる生活費が多額になりますので、婚姻費用としての支払金額も大きくなります。

よくある質問として、「〇〇にかかった費用を夫に請求できますか。」「〇〇の費用は妻に払わないといけないでしょうか。」という質問があります。

しかし、原則として、特定の出費について支払わないといけないかどうかという判断をするのではなく、前述のように、お互いの年収と子供の人数・年齢を踏まえて、トータルでいくらを婚姻費用とすべきなのかという算定をします。

なお、婚姻費用の算定において、算定表では適切な金額とはならない特殊な場合もありますので、弁護士に一度相談するのが良いでしょう。

婚姻費用は、夫婦間の話し合いで決めることができれば良いですが、話し合いでは決まらないケースも多いです。

この場合、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てることになります。

通常、婚姻費用の支払を求める妻側が調停を申し立てることになります。 婚姻費用分担調停は、離婚調停とは異なりますので、きっちりと婚姻費用の請求を行いたい場合は、離婚調停とは別に、婚姻費用分担調停を申し立てる必要があります。

ここでのポイントは、婚姻費用分担調停の対象となるのは、調停を申し立てた月からの婚姻費用という点です。

遡って過去の婚姻費用を求めることはできないのです。

したがって、妻側としては、婚姻費用の支払いが適切になされていないのであれば、できる限り速やかに婚姻費用分担調停を申し立てることが重要といえます。

 


離婚調停ってどんな手続き?

2016年08月30日

離婚調停ってどんな手続き?

離婚調停や離婚裁判という言葉をよく耳にするかもしれませんが、具体的にどのようなものなのか、なかなかイメージが湧きにくいものです。

特に離婚調停については、離婚訴訟よりも利用する可能性の高い手続きですので、どのような手続きなのか知っておくことは大事です。

そこで、離婚調停がどのような手続きなのか、概要をご説明します。

 

離婚調停とは

離婚調停とは、簡単に言うと、主に離婚に関して、家庭裁判所において話し合いを行い、話し合いがまとまった際には正式な取り決めを交わす手続きをいいます。

裁判所で行う手続きですが、調停官や調停委員の方に間に入ってもらい、話し合いをすることを基調としています。

また、裁判とは異なり、裁判官に判決を言い渡されるということはありません。

したがって、調停の段階で、離婚を命じられるなどの判決がなされることは無いのです。

もっとも、調停官や調停委員も、「法的に妥当な結論」を意識しながら話し合いを進めたり、調停案を提示しますので、調停の段階においても、法的に有効な主張立証を意識することは重要です。

ただ、離婚調停では、それまでの夫婦生活で色々と言いたかったことをぶつけてしまいがちなので、冷静な主張を自分で行うことはなかなか困難です。

また、法的に有効な主張立証を行うためには、法律の専門家である弁護士を活用することを検討した方が無難でしょう。

 

離婚調停の手続きの流れ

離婚調停は、夫婦のうちのどちらかが、家庭裁判所へ申し立てることによって始まります。

家庭裁判所は全国にありますが、原則として、申し立てられる側の人の住所を管轄する家庭裁判所へ申し立てることとなります。なお、札幌市や江別市、恵庭市、千歳市、北広島市、石狩市などは、札幌家庭裁判所の管轄となります。

調停が申し立てられると、調停申立書が相手方へ送達されると共に、第1回調停期日が指定されます。

調停期日に双方が家庭裁判所に出頭し、話し合いを行うことになるのです。

話し合いの方法ですが、夫婦双方が面と向かって話し合うのではなく、交替で調停室に入り、調停委員にそれぞれ話を聞いてもらうという方式をとります。

もっとも、代理人弁護士がついていない場合は、最初の手続説明の時や、調停成立の際に、夫婦双方が通常同席することになります。

代理人弁護士がついていれば、手続説明が省略され、調停成立の際も弁護士に相手と同席してもらえます。

調停成立というのは、話し合いがまとまり、取り決めをすることを言いますが、話し合いがまとまらなければ、調停不成立で終了となります。

離婚調停において調停不成立の場合は、どちらかが離婚訴訟を提起しない限り、特段何も取り決められないままです。

これに対し、別居中の婚姻費用に関する調停の場合は、調停不成立となったとしても、自動的に審判手続きへ移行します。

審判手続きでは、当事者間で話し合いがまとまらなくとも、裁判所が審判を下し、一定金額の婚姻費用を支払えなどの命令がなされます。

 


離婚手続きにおいて弁護士に依頼するメリット

2016年08月22日

離婚手続きにおいて弁護士に依頼するメリット

離婚問題について弁護士に相談することを考えたとしても、具体的にどのような場合に弁護士に依頼するべきなのか、なかなか分からないものです。 そこで、離婚手続きにおいて、弁護士に依頼するメリットはどのような点にあるのか、ご説明します。

 

1 自分の代理人である弁護士に効果的な主張立証をしてもらえる

離婚手続きは大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。 協議離婚は裁判所外での話し合いですが、調停と裁判は、裁判所での手続きとなります。

したがって、裁判所で行う手続きである以上、むやみに主張をするのではなく、法律や裁判例を踏まえた上での効果的な主張立証を行うことが重要となります。

調停は話し合いを基調とする手続きではありますが、調停委員が法律や裁判例を踏まえて話し合いを進めますので、これらを踏まえた主張立証はやはり重要と言えます。

また、調停委員はあくまで中立的な立場の方々ですので、自分の代理人として効果的な主張立証を行ってくれる専門家は、弁護士だけということになります。

 

2 離婚についての話し合いが大きく進む可能性が高い

離婚問題に関する法律相談で相談者の方がよく言われるのが、「当事者どうしでは話し合いにならない。話が進まない。」というお悩みです。

離婚問題は金銭的な問題や親権問題だけでなく、相手が感情的になってしまい、話が進まないという大きな問題がしばしば内在しています。

このような場合、離婚問題の専門家である弁護士が間に入ることにより、話し合いが大きく進む可能性が高いのです。

 

3 離婚に関連する様々な法的手続きを選択肢に入れることができる

離婚に関連する法的手続きは、離婚調停、婚姻費用分担調停、調停が不成立となった場合の訴訟や審判、子の引き渡しを求める審判・保全処分、不倫相手に対する慰謝料請求訴訟など、様々な手続きが想定されます。

自分でこのような手続きを全て把握し、全てを選択肢に入れることは至難です。 弁護士は法的手続きの専門家ですので、どのような法的手続きにも対応することが可能である上、最善と考えられる法的手続きに導いてくれます。

 

4 随時弁護士に相談することができ、精神的な安心感にもつながる

離婚問題は、当事者間で話し合いを行うだけでも大変な精神的負担となります。 その上、親権や財産分与などの法的問題が発生した場合、自分で手続きを進めると、「法的に不利な進め方をしているのではないか。」「自分の主張を上手く伝えることができていないのではないか。」などの不安が常につきまといます。

弁護士に代理人となってもらうことで、これらの精神的負担が大きく解消されますので、この点も弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

 

当事務所では離婚問題について、初回無料の法律相談を実施しております

当事務所では、離婚問題について、初回30分無料の法律相談を実施しております。

また、夜間や土日祝でのご相談も受け付けております(営業時間外での初回相談は、30分5000円(税別)の相談料が発生します。

なお、正式にご依頼いただいた場合、相談料は無料となります)。

お問い合わせフォームから24時間受け付けておりますので、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。

 


不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効

2016年08月16日

不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効

不倫をした配偶者あるいは不倫相手、はたまたその両方に対して慰謝料請求を検討するというご相談は多々あります。

この場合、注意点の一つとして、時効の問題があります。 不貞を理由とする慰謝料請求権の消滅時効については、見解が分かれることがあります。

裁判例においても明確な分類・見解が示されていませんが、実務上有力な考え方を簡単にご説明します。

 

損害賠償請求権の消滅時効

慰謝料請求権は、法的構成としては、不法行為に基づく損害賠償請求権にあたります。

そこで、消滅時効についても、損害賠償請求権に関する法律に則ることとなります。 民法724条前段において、損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しない時は、時効によって消滅すると定められています。

ここで問題なのは、「損害及び加害者を知った時から」という起算点の部分です。 上述のとおり、不倫関係が継続的に続くケースもあれば、不貞行為が発覚したものの夫婦生活を続けているケースもあります。

このような場合、いつの時点を「損害及び加害者を知った時」と捉えるべきなのか、問題となります。

なお、民法724条後段において、不法行為の時から20年間を経過した時も、損害賠償請求権は消滅するとされています。

つまり、不倫があったことを知らないままでも、20年が経過すると、もう慰謝料請求はすることができないということになります。

 

未だ離婚が成立していない場合、不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効はどう考える?

この場合、慰謝料請求をする側が、不貞行為を知った時から3年間で消滅時効が成立する、と考えるのが通常と思われます。

なお、不貞行為を知った時というのは、加害者を知ったということも必要です。

加害者を知ったとは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な程度に知ったことを意味します(最高裁平成14年1月29日判決)。

具体的には、加害者の氏名と住所を知ったなどの場合を言います。

 

不倫の存在を知った後、離婚成立に至った場合、慰謝料請求権の消滅時効はいつから計算する?

この場合、離婚が成立した時から3年間という数え方をすることが通常可能です。

つまり、離婚成立に至ったことが損害なので、離婚が成立するまでの間は、不倫のことを知っていたとしても、「損害を知った」とはいえないという考え方です。

なお、不倫の存在を知ったのが離婚成立の後という場合は、不倫の存在を知った時からと考えるのが通常妥当と思われます。

 


子どもとの面会交流に関する手続きとよくある質問

2016年08月10日

子どもとの面会交流に関する手続きとよくある質問

離婚問題、あるいは離婚後の問題でご相談頂くことがあるのが、お子様との面会交流に関する問題です。

別居後、離婚が成立するまでの間に面会交流の問題が発生することもあれば、離婚成立後に面会交流の問題が発生することもあります。

以下、面会交流に関する手続きをご説明すると共に、よくある質問をご紹介します。

 

面会交流に関する手続き

面会交流とは、別居中や離婚後に、子と共に暮らしていない方の親が、子と面会等によって交流することを言います。

通常、親どうしの話し合いによって面会交流を進めていくことになりますが、面会交流が上手くいかないという場合もしばしばあります。

この場合、どのような手続きをとることが考えられるでしょうか。

まず、弁護士に代理人となってもらい、面会交流に関する交渉や、試行的な面会交流への立会いを依頼することが考えられます。

裁判所での手続きをとることまでは希望しない場合などは、この方法が考えられるでしょう。

次に、家庭裁判所へ調停を申し立てて、裁判所での話し合いを行う方法が考えられます。

面会交流調停を申し立てることが考えられますが、離婚調停の中で面会交流に関して話し合うことも可能です。

調停では、調停委員や家庭裁判所調査官を通じて話し合いを行う他、試行的な面会交流の実施を図ります。

面会交流調停において話し合いが成立しない場合、自動的に審判手続きへと移行します。 審判では、両当事者への審問等を経た上で、裁判所が面会交流に関する決定を出すことになります。

 

面会交流に関してよくある質問

面会交流に関してよくある質問をいくつかご紹介します。

養育費を支払わないことを理由に面会交流を拒否できるか?

とてもよくある質問です。

原則として養育費の問題と面会交流の問題は別問題であり、養育費の不払いのみを理由に面会交流を拒否することはできません。

面会交流では子の福祉を最優先に考えます。

たとえ養育費不払いの事実があったとしても、子の福祉上、親子の面会交流を実施するのが望ましいのであれば、面会交流を実施させるべきであるという判断になります。

 

不倫をした夫(or妻)、妻(or夫)に暴力をふるった夫(or妻)に対して面会交流を拒否できるか?

この場合も、不倫をしたこと、暴力をふるったことだけを理由に、面会交流を拒否できるわけではありません。 面会交流によって子にどのような悪影響を与えるのかなど、あくまで子の福祉を基準に面会交流についての当否が検討されます。

 

遠方の場合の面会交流はどうすればよいか?

両当事者の居住地が遠く離れているため、月1回の面会実施は子にとっての負担にもなり、実現困難であるという事例もあります。

しかし、この場合も、遠方であることだけを理由に面会交流を否定するべきでなく、子の福祉を考慮しながら、面会交流の実施に向けた現実的な方法を検討することになります。

例えば、夏休みを利用した面会や、電話や手紙などの間接的な面会交流の活用などが考えられます。

 


離婚における財産分与の基礎知識とポイント

2016年08月04日

離婚における財産分与の基礎知識とポイント

離婚の際にしばしば問題となるのが財産分与です。

子がいなくとも、財産分与の問題が解決せず、なかなか離婚協議が進まないということもあります。

財産分与という言葉をよく耳にするものの、そのポイントについては一般的にはあまり知られていません。

そこで、財産分与の基礎知識とポイントをご説明します。

 

財産分与の対象

財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。

夫婦の共有財産とは、婚姻の後、夫婦が協力して築き上げた財産のことであり、夫婦のいずれの名義のものも対象となります。

ただし、夫婦のいずれかの名義であっても、財産分与の対象とはならないものとして、特有財産があります。

特有財産は、結婚前から保有していた財産、親族などから贈与や相続によって取得した財産など、夫婦が協力して取得したものではない財産です。

 

財産分与の基準時点

よくある弁護士への質問として、「今別居中だが、相手が勝手に財産を費消してしまったら、請求できる財産分与の金額が減ってしまいませんか。」というものがあります。

財産分与の基準時点は、原則として別居時です。

つまり、別居した後に財産を費消したとしても、別居時点に遡って財産分与の計算を行うため、財産分与の請求額が減ることはないということです(ただ、請求額は変わらなくとも、費消によって、相手が支払い能力を失ってしまったという問題が起きる恐れはあります)。

これに対し、不動産など、価値に変動のある財産の評価については、財産分与についての話し合いを行う時点が原則として基準になります。

不動産の場合、きっちりと鑑定評価を行うという方法も考えられますが、鑑定費用もかかるため、不動産業者の査定書を参照して価格に関して合意することが多いです。

 

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として1対1となります。

専業主婦の場合であっても、家事や育児による貢献を考慮し、2分の1ずつの割合と評価するのが通常です。

ただし、夫婦のどちらかの特別の才能や努力によって、高額の収入を得ることができ、それが夫婦共有財産の多くを占めている場合などは、この割合が修正される可能性があります。

 


子どもの親権はどうやって判断される?

2016年07月11日

子の親権についての判断基準

夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚成立の際には、親権者を指定することが必須となります。

財産分与や養育費、慰謝料などについては、取り決めが無いままであっても、離婚届を役所へ提出することによって協議離婚が成立します。

しかしながら、親権者の指定をしないまま離婚届を提出することはできないため、協議離婚であっても、親権者の指定が必須となります(民法819条1項)。

それでは、親権について話し合いで決まらない場合、裁判所ではどのような基準で親権者が定められるのでしょうか。

 

親権者の指定にあたっての判断要素

親権に関する判断は、様々な事情が総合的に考慮されてなされるものであり、何か一つの要素だけで決まるというものではありません。

それでは、どのような判断要素があるのでしょうか。

大きく分けて、親についての要素と、子についての要素に分かれます。

親についての要素は、健康状態や性格、経済力などの親の子を育てる能力、家庭内の環境、これまで子とどのように関わってきたか、実家からの援助などを挙げることができます。

子についての要素は、子の意思、現在の環境状況や環境の変化、年齢や発育状況、兄弟姉妹との関係などが挙げられます。

その他、子が幼い場合には母親優先の原則が働くこと、兄弟不分離の考えが一定程度考慮されることなどが言えます。

子の意思に関しては、15歳以上の子については必ず子の陳述を聴くこととなっています。 他方、10歳未満の子などの場合、子の意思を表明する能力が問題となる可能性があります。

 

家庭裁判所調査官による調査

離婚調停において子の親権が争われる場合、家庭裁判所調査官(以下、「調査官」といいます。)による調査が行われることになります。

調査官は、親の監護能力や、子の生活状況、子の意向などについて調査します。

調査方法は、まず、親の生活状況や収入状況、健康状態などを記載した「親権に関する陳述書」や、家の間取り等の資料を両当事者から提出してもらいます。

その上で、面接での調査、家庭訪問、子の学校や保育園の調査などを行います。

これらの調査を行った上で、調査官は、調査結果をまとめた調査報告書を作成します。

調査報告書は、親権の判断において重要な参考資料となります。

 


離婚協議で養育費はどうやって決めればいい?

2016年07月04日

離婚協議における養育費の取り決め方法

離婚協議の際、夫婦間に未成年の子がいる場合、養育費がしばしば問題となります。

また、離婚協議の際のみならず、離婚成立後にも、養育費の不払いや増減額が問題となるケースは多々あります。

以下、養育費の取り決め方法の他、取り決め後の問題についても簡単にご説明します。

 

養育費算定表

養育費の取り決めは一般に、「養育費・婚姻費用算定表」という表を用いて行います。

家庭裁判所における離婚調停では、裁判所は算定表に基づいて養育費に関する話を進めますので、裁判所外で離婚協議を行う場合にも、「養育費・婚姻費用算定表」を参考にすると良いでしょう。「養育費・婚姻費用算定表」は、裁判所のホームページにも掲載されていますので、インターネット上で検索して簡単に手に入れることができます。

「養育費・婚姻費用算定表」は、大まかに言うと、夫婦それぞれの年収と、子の人数・年齢によって、養育費の金額を決めるという内容になっています。例えば、妻が子を養育するという場合、夫の年収が高ければ高いほど養育費の金額は上がりますし、子の人数については多ければ多いほど養育費の金額は上がります。

もっとも、算定表に基づいて養育費を算定することが必ずしも妥当ではないケースも存在します。

例えば、夫が自宅を出て別居した後、妻や子が住み続けている自宅の住宅ローンを高額に負担し続けている場合、養育費の算定に当たってこの点をどの程度考慮すべきかが問題になります。

 

養育費の増額・減額

離婚協議の際に養育費を取り決めたものの、例えば、その後養育費の支払い義務者が失業し、支払いが困難となる場合があります。

このような場合、養育費を取り決めた当時と事情が相当程度変わったとして、養育費の減額を請求することができます。他方、子について多額の医療費が必要となったなど、養育費の増額を請求することができる事情の変化もあり得ます。

養育費の増額・減額については、自ら調停を申し立てる必要があります。離婚調停において養育費を取り決めたという場合、事情の変化が生じたからといって、養育費に関する調停内容が自動的に変更されるわけではありませんので、注意が必要です。

 

養育費不払いへの対応

離婚成立後の問題として、しばしば問題となるのが養育費の不払いです。

養育費不払いへの対応については、出発点である、離婚協議での養育費取り決めの段階が重要となります。そもそも養育費についての取り決めが不十分なまま離婚協議を終了させれば、養育費不払いのリスクは格段に高まります。

養育費の支払いに不安がある場合、合意書のような自分たちで作った書面のみで取り決めを行うのでは不十分です。公正証書や調停など、養育費不払いとなった場合に、強制執行の手続きを直ちに取ることのできる形での取り決めを検討すべきでしょう。

 


離婚の手続には種類がある?

2016年05月31日

協議離婚・調停離婚・裁判離婚の各手続

一口に「離婚する」と言っても、実は、離婚成立のための手続はいくつかあります。

代表的な離婚手続としては、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つがあります。

以下、それぞれの概要を簡単にご説明します。

 協議離婚

協議離婚とは、夫婦が裁判所外で話し合いを行い、離婚についての協議を成立させる手続きです。

離婚全体のうち、ほとんどの場合がこの協議離婚によるものです。

未成年の子がいる場合は、親権者を決定しなければ離婚届を提出することはできませんが、逆に言うと親権者さえ決定すれば離婚届を提出することはできます。

もっとも、離婚の際に問題となるのは親権者の決定だけではありませんので、安易に協議離婚を成立させ、離婚届を提出するのは、場合によってはとても危険です。

 

 調停離婚

調停離婚は、家庭裁判所で夫婦が話し合いを行い、離婚についての話し合いがまとまった場合に成立する離婚手続です。

原則として、調停を申し立てられる側の住所地を管轄する家庭裁判所において調停手続を行うことになりますので、相手方が遠方に住んでいる場合には注意する必要があります。

調停では、夫婦が調停室へ交互に入り、2名の男女の調停委員に対して自分の考えや要望を伝えます。

 

 裁判離婚

裁判離婚とは、家庭裁判所での離婚訴訟によって成立する離婚手続です。

もっとも、原則としていきなり離婚訴訟を提起することはできません。

法律上、まずは離婚調停を申し立てて、調停手続での話し合いを行わなければならないことになっています。

これを調停前置主義といいます。

また、離婚訴訟が提起された場合においても、裁判上和解が成立し、これによって離婚成立となることもあります。

離婚訴訟が始まったからといって、必ずしも判決が下されるわけではないということです。

なお、離婚を認容する判決を得るには、民法770条1項各号の離婚理由が必要となります。


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