人身事故に遭った後の治療と症状固定
交通事故で怪我を負った場合、怪我の治療のため、当然のことながら入院や通院をする必要があります。
例えば、こちら側の過失が0で怪我を負った場合、加害者側の任意保険会社とやりとりしながら治療を続けていくこととなります。
この場合、任意保険会社から直接病院に対して治療費の支払いが行われるのが通常ですが、治療はいつまで続けることができるのでしょうか。
また、医師による治療以外の治療方法を選ぶことはできるのでしょうか。
整骨院や接骨院、鍼灸などの利用
交通事故で負った怪我の治療は、整形外科への通院により行われることが多いですが、整骨院や鍼灸などを利用したいという場合も多いです。
注意点としては、これらの利用が損害賠償の対象として必ずしも当然に認められるわけではないということです。
整骨院や鍼灸を利用することが有効かつ相当であり、特に医師の指示がある場合などは、損害賠償の対象として実務上認められる傾向にあります。
医師の指示が必ず必要というわけではありませんが、医師の指示無く利用する際には、損害賠償の対象とならないリスクに注意しなければなりません。
さらに、カイロプラクティックやマッサージなどの利用についても、その有効性や相当性について注意する必要があります。
治療はいつまでも続けることができる?
しばらく通院を続けると、保険会社から治療の終了を打診されることがあります。
その際の説明において使われる言葉が、「症状固定」という用語です。 症状固定とは、治療を続けてもこれ以上良くはならないという状態のことをいいます。
症状固定の時期としては、事故に遭った時から6か月というのが一つの目安とされることが多いですが、あくまで目安であり、必ずしも6か月で症状固定とするのが相当とは限りません。
被害者の方から弁護士に対してよく質問されるのは、「症状固定で治療終了になると、その後の賠償は何も無いのですか?」というものです。
症状固定後は、通院したとしても、治療費について保険会社から病院へ直接支払われることはありませんし、後から治療費を請求することも原則としてできません。
それでは、症状固定後のことについて何も賠償がなされないのかというと、そうではありません。
症状固定時にも障害が残っており、これが後遺障害に当たる場合、後遺障害に対する賠償がなされます。
後遺障害に対する賠償は主に、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益です。 後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことに対する精神的損害に対する賠償です。
後遺障害逸失利益は、後遺障害を負ったことにより、得られたはずの収入を得られなくなったことに対する賠償です。
症状固定時期の妥当性が争点になることはありますが、症状固定とすることが被害者にとって必ずしも不利になるわけではないのです。