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法律コラム

離婚手続きにおいて弁護士に依頼するメリット

2016年08月22日

離婚手続きにおいて弁護士に依頼するメリット

離婚問題について弁護士に相談することを考えたとしても、具体的にどのような場合に弁護士に依頼するべきなのか、なかなか分からないものです。 そこで、離婚手続きにおいて、弁護士に依頼するメリットはどのような点にあるのか、ご説明します。

 

1 自分の代理人である弁護士に効果的な主張立証をしてもらえる

離婚手続きは大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。 協議離婚は裁判所外での話し合いですが、調停と裁判は、裁判所での手続きとなります。

したがって、裁判所で行う手続きである以上、むやみに主張をするのではなく、法律や裁判例を踏まえた上での効果的な主張立証を行うことが重要となります。

調停は話し合いを基調とする手続きではありますが、調停委員が法律や裁判例を踏まえて話し合いを進めますので、これらを踏まえた主張立証はやはり重要と言えます。

また、調停委員はあくまで中立的な立場の方々ですので、自分の代理人として効果的な主張立証を行ってくれる専門家は、弁護士だけということになります。

 

2 離婚についての話し合いが大きく進む可能性が高い

離婚問題に関する法律相談で相談者の方がよく言われるのが、「当事者どうしでは話し合いにならない。話が進まない。」というお悩みです。

離婚問題は金銭的な問題や親権問題だけでなく、相手が感情的になってしまい、話が進まないという大きな問題がしばしば内在しています。

このような場合、離婚問題の専門家である弁護士が間に入ることにより、話し合いが大きく進む可能性が高いのです。

 

3 離婚に関連する様々な法的手続きを選択肢に入れることができる

離婚に関連する法的手続きは、離婚調停、婚姻費用分担調停、調停が不成立となった場合の訴訟や審判、子の引き渡しを求める審判・保全処分、不倫相手に対する慰謝料請求訴訟など、様々な手続きが想定されます。

自分でこのような手続きを全て把握し、全てを選択肢に入れることは至難です。 弁護士は法的手続きの専門家ですので、どのような法的手続きにも対応することが可能である上、最善と考えられる法的手続きに導いてくれます。

 

4 随時弁護士に相談することができ、精神的な安心感にもつながる

離婚問題は、当事者間で話し合いを行うだけでも大変な精神的負担となります。 その上、親権や財産分与などの法的問題が発生した場合、自分で手続きを進めると、「法的に不利な進め方をしているのではないか。」「自分の主張を上手く伝えることができていないのではないか。」などの不安が常につきまといます。

弁護士に代理人となってもらうことで、これらの精神的負担が大きく解消されますので、この点も弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

 

当事務所では離婚問題について、初回無料の法律相談を実施しております

当事務所では、離婚問題について、初回30分無料の法律相談を実施しております。

また、夜間や土日祝でのご相談も受け付けております(営業時間外での初回相談は、30分5000円(税別)の相談料が発生します。

なお、正式にご依頼いただいた場合、相談料は無料となります)。

お問い合わせフォームから24時間受け付けておりますので、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。

 


交通事故による休業損害の算定方法

2016年08月18日

交通事故による休業損害の算定方法

休業損害とは、交通事故に遭い、治療や療養のために仕事を休業したこと、あるいは十分に仕事ができなかったことによる損害を指します。

自賠責保険の基準では、原則として1日5700円に休業日数を掛けた金額が、休業損害となります。

もっとも、自賠責保険の基準を超えて休業損害が発生するケースは当然考えられますので、裁判で認められる休業損害はどのようにして算定されるのか、以下、収入形態別にご説明します。

 

給与所得者の休業損害

給与所得者については、交通事故に遭う前3か月の給与を平均して基礎収入日額を算出し、これに休業日数を掛けて休業損害を算定するのが一般的です。

この給与には住宅手当などの各種手当を含み、所得税や住民税など税金を控除しない金額で算定します。

また、休業によって賞与が減額となったという事情がある場合は、賞与の減額証明書などを会社に発行してもらうことにより、この点の休業損害を立証できる可能性があります。 なお、3か月ではなく、年間の給与を基礎として休業損害を算定した裁判例もあります。

 

自営業者(個人事業主)の休業損害

現実に収入の減少があった場合に、休業損害が認められます。

交通事故に遭う前に自営業者の収入は、原則として、事故の前年の確定申告書によって認定されます。

過少申告などによって、実際は確定申告書以上の収入を事故前に得ていたという場合も、信用性の高い証拠によってそれを立証しない限り、確定申告書以上の収入があったとは認められません。

また、休業しているにもかかわらず、事業の維持のためにやむを得ず発生する家賃などの固定費については、休業損害に含まれます。

 

会社役員の休業損害

会社役員の場合、役員報酬が収入となりますが、給与とは異なり、休業したからといって必ずしも役員報酬が減額するわけではありません。

また、一口に会社役員と言っても、サラリーマン役員というような労働の対価として役員報酬を得ている場合もあれば、同族会社における利益配当的な役員報酬を得ている役員の場合もあります。

休業損害の算定にあたっては、それぞれの事案の個別具体的な事情を踏まえた上で、役員報酬のうち、労務提供の対価としての性質を有する部分はどの程度かを判断することになります。

 

家事従事者の休業損害

家事労働に従事する方の場合、賃金センサスという日本の平均賃金を算出したものがありますが、この賃金センサスの女子平均賃金をもとに、休業損害を算出するのが通常です。

家事労働に従事する方というのは、他の人のために従事する方を指しますので、一人暮らしの場合は原則として認められません。

家事と共に仕事をしているいわゆる兼業主婦の方の場合は、収入が賃金センサスを超える場合、その現実の収入をもとに休業損害を請求することができます。

 

失業者の休業損害

そもそも交通事故に遭う前から収入を得ていない以上、原則として休業損害は発生しません。 もっとも、労働能力や労働意欲があり、状況からみて収入を得ることになる蓋然性が高い場合、休業損害が認められる可能性があります。

具体的には、就職の内定が出ている場合や、内定までは出ていないものの就職活動中であった場合などが考えられます。

 


不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効

2016年08月16日

不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効

不倫をした配偶者あるいは不倫相手、はたまたその両方に対して慰謝料請求を検討するというご相談は多々あります。

この場合、注意点の一つとして、時効の問題があります。 不貞を理由とする慰謝料請求権の消滅時効については、見解が分かれることがあります。

裁判例においても明確な分類・見解が示されていませんが、実務上有力な考え方を簡単にご説明します。

 

損害賠償請求権の消滅時効

慰謝料請求権は、法的構成としては、不法行為に基づく損害賠償請求権にあたります。

そこで、消滅時効についても、損害賠償請求権に関する法律に則ることとなります。 民法724条前段において、損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しない時は、時効によって消滅すると定められています。

ここで問題なのは、「損害及び加害者を知った時から」という起算点の部分です。 上述のとおり、不倫関係が継続的に続くケースもあれば、不貞行為が発覚したものの夫婦生活を続けているケースもあります。

このような場合、いつの時点を「損害及び加害者を知った時」と捉えるべきなのか、問題となります。

なお、民法724条後段において、不法行為の時から20年間を経過した時も、損害賠償請求権は消滅するとされています。

つまり、不倫があったことを知らないままでも、20年が経過すると、もう慰謝料請求はすることができないということになります。

 

未だ離婚が成立していない場合、不倫を理由とする慰謝料請求権の消滅時効はどう考える?

この場合、慰謝料請求をする側が、不貞行為を知った時から3年間で消滅時効が成立する、と考えるのが通常と思われます。

なお、不貞行為を知った時というのは、加害者を知ったということも必要です。

加害者を知ったとは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な程度に知ったことを意味します(最高裁平成14年1月29日判決)。

具体的には、加害者の氏名と住所を知ったなどの場合を言います。

 

不倫の存在を知った後、離婚成立に至った場合、慰謝料請求権の消滅時効はいつから計算する?

この場合、離婚が成立した時から3年間という数え方をすることが通常可能です。

つまり、離婚成立に至ったことが損害なので、離婚が成立するまでの間は、不倫のことを知っていたとしても、「損害を知った」とはいえないという考え方です。

なお、不倫の存在を知ったのが離婚成立の後という場合は、不倫の存在を知った時からと考えるのが通常妥当と思われます。

 


交通事故に遭った時に弁護士へ依頼するタイミング

2016年08月12日

交通事故に遭った時に弁護士へ依頼するタイミング

交通事故に遭って怪我を負った時、どのタイミングで弁護士へ相談し、依頼するべきでしょうか。 弁護士というとなかなか敷居が高いように感じてしまうかもしれませんが、誤った対応をしてしまう前に相談することは重要です。

また、経済的メリットだけでなく、精神的負担を軽減することができる可能性もあります。 以下、交通事故に遭った後のそれぞれの段階において、弁護士に相談・依頼するメリットをご説明します。

 

交通事故に遭った直後・治療中の段階

交通事故に遭った直後、あるいはその後の治療中に弁護士に相談、依頼するメリットとして、まず、治療等に関する疑問や今後の対応について早期段階から専門的アドバイスをもらうことができるという点があります。

どういう症状であるのかなどについて早期に弁護士に把握してもらい、治療や休業損害などに関する専門的なアドバイスを得られます。これにより、場合によっては最終的な損害賠償額にも影響を及ぼす可能性があります。

また、保険会社との交渉窓口になってもらうことができるという点を挙げることができます。 加害者側は示談代行として保険会社が窓口となりますが、被害者側は自分自身で対応しなければなりません。

このこと自体にとても精神的な負担を感じる被害者の方は多くいらっしゃいます。 そんな時、弁護士への依頼によって、保険会社とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。

 

症状固定が近づいてきた段階

治療を続けていくと、保険会社からの治療費打ち切りの打診などがなされます。 この時、弁護士に相談することによって、症状固定の時期が不合理でないか否かなどについて、適切なアドバイスを得ることができます。

また、症状固定とする場合も、損害賠償請求において重要な、後遺障害に関するアドバイスなどを得られる点も、弁護士に相談する大きなメリットです。

 

後遺障害に関する等級認定結果が出た後の段階

後遺障害に関して等級認定の結果に不服がある場合、異議を申し立てる手続きを検討することになります。

異議申立ては、書面の提出によって行いますが、自分自身で手続きを行うよりも、交通事故と法的書面作成のプロフェッショナルである弁護士に手続きを依頼することを検討するのがよいと考えられます。

 

保険会社から示談案が提示された段階

自分自身で示談を成立させた場合、一度成立した示談をひっくり返すのはまずもって不可能となります。

したがって、安易に示談する前に、弁護士に相談することを強くお勧めします。

また、弁護士が交渉することにより、損害賠償額が大きく増額する可能性は非常に高いです。

さらに、訴訟(裁判)で争うことも視野に入れるのであれば、弁護士に任せるのが無難といえるでしょう。

 

まとめ

以上が、交通事故に遭った際に弁護士へ依頼するタイミングに関するご説明ですが、早期段階であればあるほど、上述のメリットを多く受けることができます。

したがって、一般的には、できるだけ早期に弁護士へ依頼する方がメリットが大きいといえるでしょう。

 

当事務所では、事故直後の段階から、初回相談料無料で交通事故に関する法律相談をお受けしております。また、無料出張相談も実施しております。 まずはお気軽にお問い合わせください。


子どもとの面会交流に関する手続きとよくある質問

2016年08月10日

子どもとの面会交流に関する手続きとよくある質問

離婚問題、あるいは離婚後の問題でご相談頂くことがあるのが、お子様との面会交流に関する問題です。

別居後、離婚が成立するまでの間に面会交流の問題が発生することもあれば、離婚成立後に面会交流の問題が発生することもあります。

以下、面会交流に関する手続きをご説明すると共に、よくある質問をご紹介します。

 

面会交流に関する手続き

面会交流とは、別居中や離婚後に、子と共に暮らしていない方の親が、子と面会等によって交流することを言います。

通常、親どうしの話し合いによって面会交流を進めていくことになりますが、面会交流が上手くいかないという場合もしばしばあります。

この場合、どのような手続きをとることが考えられるでしょうか。

まず、弁護士に代理人となってもらい、面会交流に関する交渉や、試行的な面会交流への立会いを依頼することが考えられます。

裁判所での手続きをとることまでは希望しない場合などは、この方法が考えられるでしょう。

次に、家庭裁判所へ調停を申し立てて、裁判所での話し合いを行う方法が考えられます。

面会交流調停を申し立てることが考えられますが、離婚調停の中で面会交流に関して話し合うことも可能です。

調停では、調停委員や家庭裁判所調査官を通じて話し合いを行う他、試行的な面会交流の実施を図ります。

面会交流調停において話し合いが成立しない場合、自動的に審判手続きへと移行します。 審判では、両当事者への審問等を経た上で、裁判所が面会交流に関する決定を出すことになります。

 

面会交流に関してよくある質問

面会交流に関してよくある質問をいくつかご紹介します。

養育費を支払わないことを理由に面会交流を拒否できるか?

とてもよくある質問です。

原則として養育費の問題と面会交流の問題は別問題であり、養育費の不払いのみを理由に面会交流を拒否することはできません。

面会交流では子の福祉を最優先に考えます。

たとえ養育費不払いの事実があったとしても、子の福祉上、親子の面会交流を実施するのが望ましいのであれば、面会交流を実施させるべきであるという判断になります。

 

不倫をした夫(or妻)、妻(or夫)に暴力をふるった夫(or妻)に対して面会交流を拒否できるか?

この場合も、不倫をしたこと、暴力をふるったことだけを理由に、面会交流を拒否できるわけではありません。 面会交流によって子にどのような悪影響を与えるのかなど、あくまで子の福祉を基準に面会交流についての当否が検討されます。

 

遠方の場合の面会交流はどうすればよいか?

両当事者の居住地が遠く離れているため、月1回の面会実施は子にとっての負担にもなり、実現困難であるという事例もあります。

しかし、この場合も、遠方であることだけを理由に面会交流を否定するべきでなく、子の福祉を考慮しながら、面会交流の実施に向けた現実的な方法を検討することになります。

例えば、夏休みを利用した面会や、電話や手紙などの間接的な面会交流の活用などが考えられます。

 


解雇の種類とポイント

2016年08月07日

解雇の種類とポイント

従業員に度重なる勤務態度の不良などがあった場合、経営者としては解雇も視野に入れる場合があると思います。

しかし、解雇にも幾つか種類があります。

また、解雇の手続きは一般的に考えられているほど容易なものではありません。

解雇手続きの種類と、経営者の方が注意すべきポイントをご説明します。

 

普通解雇

通常「解雇」という場合、普通解雇を指します。

解雇理由としては、従業員の能力不足や勤務態度の不良を理由とするものが多いです。

普通解雇が無効とならないためには、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること」が必要です。

しかし、この要件は、かなりハードルが高いです。

かなりの能力不足、かなりの勤務態度不良があったとしても、いきなり解雇手続をとれば、無効となるおそれが非常に大きいです。

指導や注意などを経ずに、即解雇をとっている場合、解雇無効を主張される可能性が非常に高くなります。

大事なのは、段階を踏むことです。

具体的には、注意・指導を繰り返して改善の機会を与えたり、場合によっては配置転換を行って他の仕事で活躍する機会を与えるなどした上で、それでも改善されない場合に初めて、解雇という最終手段をとる、という手順を踏むことです。

 

整理解雇

整理解雇も普通解雇の一種ですが、会社の経営上の理由によるものをいいます。

会社の業績悪化による人員削減などが典型的なものです。

人員削減の必要性、解雇回避努力義務、解雇対象者選定の合理性、協議等の解雇手続の妥当性が「整理解雇の4要件」と呼ばれるものであり、この4要件を基準に、整理解雇が有効なものか否かが判断されます。

人員を減らす必要があるかどうか、解雇を避ける努力をしたかどうか、解雇の対象者を不合理な理由で選んでいないかどうか、従業員への説明や協議など、解雇にあたって妥当な手続きをとったかどうか。この4点がチェックされます。

もっとも、4要件といっても、4つそれぞれの有る無しをチェックするのではなく、それぞれがどの程度満たされているかを考慮した上で、総合的に判断します。

4つのうち1つでも欠けていたら整理解雇は無効というわけではなく、他の3つの要件を十分に満たしていれば整理解雇が有効になる可能性があるということになります。

ただし、1つが完全に欠けている場合、いくら他の3つの要件が十分に満たされていたとしても、整理解雇は無効と判断されてしまう可能性が高いでしょう。

したがって、4要件全てを満たすように留意することがやはり望ましいです。

 

懲戒解雇

まず、懲戒解雇は就業規則に根拠となる規定を設けておく必要があります。

これは、減給処分などの他の懲戒処分についても同様です。

また、就業規則に規定を設けておくだけではなく、その内容を従業員に周知しておかなければなりません。

なお、懲戒解雇とする場合、退職金も不支給とすることが多いですが、退職金不支給についてもあらかじめ就業規則に定めておく必要があります。

次に、普通解雇同様、懲戒解雇が相当であるということが必要ですが、普通解雇以上にハードルが高くなります。

普通解雇でもかなりハードルが高いので、それ以上にハードルが高い懲戒解雇は、よっぽどの事情が無い限り、懲戒解雇することは困難ということになります。

想定されるのは、業務上横領や社内での傷害行為などの犯罪行為です。 これに対し、明確な職務命令違反があったとしても、事情によっては懲戒解雇ができない可能性があります。

 


離婚における財産分与の基礎知識とポイント

2016年08月04日

離婚における財産分与の基礎知識とポイント

離婚の際にしばしば問題となるのが財産分与です。

子がいなくとも、財産分与の問題が解決せず、なかなか離婚協議が進まないということもあります。

財産分与という言葉をよく耳にするものの、そのポイントについては一般的にはあまり知られていません。

そこで、財産分与の基礎知識とポイントをご説明します。

 

財産分与の対象

財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。

夫婦の共有財産とは、婚姻の後、夫婦が協力して築き上げた財産のことであり、夫婦のいずれの名義のものも対象となります。

ただし、夫婦のいずれかの名義であっても、財産分与の対象とはならないものとして、特有財産があります。

特有財産は、結婚前から保有していた財産、親族などから贈与や相続によって取得した財産など、夫婦が協力して取得したものではない財産です。

 

財産分与の基準時点

よくある弁護士への質問として、「今別居中だが、相手が勝手に財産を費消してしまったら、請求できる財産分与の金額が減ってしまいませんか。」というものがあります。

財産分与の基準時点は、原則として別居時です。

つまり、別居した後に財産を費消したとしても、別居時点に遡って財産分与の計算を行うため、財産分与の請求額が減ることはないということです(ただ、請求額は変わらなくとも、費消によって、相手が支払い能力を失ってしまったという問題が起きる恐れはあります)。

これに対し、不動産など、価値に変動のある財産の評価については、財産分与についての話し合いを行う時点が原則として基準になります。

不動産の場合、きっちりと鑑定評価を行うという方法も考えられますが、鑑定費用もかかるため、不動産業者の査定書を参照して価格に関して合意することが多いです。

 

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として1対1となります。

専業主婦の場合であっても、家事や育児による貢献を考慮し、2分の1ずつの割合と評価するのが通常です。

ただし、夫婦のどちらかの特別の才能や努力によって、高額の収入を得ることができ、それが夫婦共有財産の多くを占めている場合などは、この割合が修正される可能性があります。

 


成年後見人って何?成年後見制度のデメリットは?

2016年08月01日

成年後見人って何?成年後見制度のデメリットは?

認知症などによって判断能力が低下してしまった時、本人名義の不動産について処分できなくなる、施設入所などに関する契約を交わせなくなるなどの事態が生じ、親族が困ってしまうことがしばしばあります。

このような事態が生じた時、事後的に対応する制度が成年後見制度です。

成年後見制度とは、判断能力が著しく低下した本人のために、家庭裁判所の一定の監督のもと、後見人が身上監護と財産管理を行う制度のことを言います。

法定後見とも言います。

以下、成年後見制度の簡単な概要と、その難点についてご説明します。

 

成年後見制度の概要

上記の身上監護というのは、本人の生活の維持や医療、介護など、身上の保護に関する法律行為を行うことです。

法律行為とは、施設入所契約や介護契約の締結や解除のことをいいます。

その他、施設料や医療費の支払いなども行いますが、実際に身の回りの世話や介護を行うことは含まれません。

財産管理とは、本人の財産全体を把握し、本人のために管理や処分を行うことです。 後見人は、身上監護と財産管理に関して、包括的に代理権を持つことになりますが、判断能力の低下が著しいとまでは言えない場合、保佐、補助という制度もあります。

保佐・補助は、後見人が全面的に代理する後見の場合とは異なり、本人に一定程度の権限が残された上で、保佐人、補助人がそれを同意権や取消権によって監督・サポートするというシステムとなっています。

 

成年後見制度の難点

認知症に対する事後的な対応策である成年後見制度には、いくつかの難点がありますのでご説明します。

①後見人選任の手続きに時間を要する点

成年後見の開始を申し立てる準備の期間、申立後の手続きに要する期間を併せると、おおよそ3か月以上、後見人が選任されるまで期間を要します。

②申立手続きについての親族の負担

本人は判断能力が低下してしまった状態になっているため、親族による後見の申立てが原則となります。

したがって、親族に申立手続きの手間と費用を負担させることになってしまいます。

③後見人はあくまで家庭裁判所が選任する点

申立てを行う親族において、後見人候補者を挙げて、家庭裁判所に後見人の希望を伝えることはできますが、最終的に決定するのは裁判所になりますので、必ずしも希望が通るとは限りません。

④本人の意向を反映しきれない

後見人は本人のために財産管理・身上監護を行いますが、判断能力が低下した本人に意向確認をすることが困難である以上、細かく本人の意向に沿うということはできません。

以上の難点を解決する方法として、判断能力が低下する前に、本人自身があらかじめ自分の後見人を指名し、自分のライフプランを伝えることのできる意後見制度があります。 当事務所では、成年後見(法定後見)に関するご相談、任意後見に関するご相談のいずれについても承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 


交通事故における後遺障害と等級認定手続き

2016年07月15日

交通事故における後遺障害と等級認定手続き

交通事故に遭った後の示談交渉などで、争点となることが多いのが後遺障害についてです。

後遺障害の有無や程度はどのようにして決まり、損害賠償の金額にどのように影響してくるのか、以下、ご説明します。

 

損害賠償金額への影響

後遺障害とは、いわゆる後遺症のことを指すと考えて差し支えありませんが、後遺障害の内容によって損害賠償金額が大きく変動するため、後遺障害は後述の等級認定手続きにより、ある程度判断基準が統一化され、等級による区別がなされています。

後遺障害の有無は、損害賠償金額の算定に大きな影響を与えます。

後遺障害が残存する場合、後遺障害慰謝料と、後遺障害逸失利益が発生するためです。

後遺障害の程度や、その人について将来見込まれる収益の多寡にもよりますが、一般的に、後遺障害が残存する場合は、残存しない場合と比べて損害賠償金がかなり高額となります。

そのため、被害者にとっては、症状固定後、後遺障害が残存すると評価されるか否かは、大きな問題となるのです。

 

後遺障害に関しての等級認定手続き

後遺障害の有無や程度については、等級認定の手続きというものが行われます。

これは、加害者側の自賠責保険会社において手続きを行うものですが、実際上の認定手続きは、損害保険料算出機構というところで行われます。

保険会社用の毎月の診断書やレントゲンなどに基づいて判断されることになりますが、重要な判断資料として、後遺障害診断書があります。

後遺障害診断書は、症状固定となった時に、主治医に記載してもらう診断書であり、症状固定時の検査結果や症状の他、入通院期間や実通院日数なども記載されます。

症状の記載漏れや、検査結果の漏れが無いよう、主治医に記載してもらう必要があります。

等級は一番軽いもので14級、一番重いもので1級という基準で認定され、複数箇所について等級が認定される場合もあります。

このような自賠責保険会社の等級認定結果に対しては、異議申立ての手続きを行うことが可能です。

異議申立てを行うべきか否かについては、弁護士に一度相談してみても良いでしょう。 なお、等級認定結果は、訴訟において重要な判断要素となりますが、裁判所は必ずしも自賠責保険会社の等級認定結果に従うわけではありません。

 


子どもの親権はどうやって判断される?

2016年07月11日

子の親権についての判断基準

夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚成立の際には、親権者を指定することが必須となります。

財産分与や養育費、慰謝料などについては、取り決めが無いままであっても、離婚届を役所へ提出することによって協議離婚が成立します。

しかしながら、親権者の指定をしないまま離婚届を提出することはできないため、協議離婚であっても、親権者の指定が必須となります(民法819条1項)。

それでは、親権について話し合いで決まらない場合、裁判所ではどのような基準で親権者が定められるのでしょうか。

 

親権者の指定にあたっての判断要素

親権に関する判断は、様々な事情が総合的に考慮されてなされるものであり、何か一つの要素だけで決まるというものではありません。

それでは、どのような判断要素があるのでしょうか。

大きく分けて、親についての要素と、子についての要素に分かれます。

親についての要素は、健康状態や性格、経済力などの親の子を育てる能力、家庭内の環境、これまで子とどのように関わってきたか、実家からの援助などを挙げることができます。

子についての要素は、子の意思、現在の環境状況や環境の変化、年齢や発育状況、兄弟姉妹との関係などが挙げられます。

その他、子が幼い場合には母親優先の原則が働くこと、兄弟不分離の考えが一定程度考慮されることなどが言えます。

子の意思に関しては、15歳以上の子については必ず子の陳述を聴くこととなっています。 他方、10歳未満の子などの場合、子の意思を表明する能力が問題となる可能性があります。

 

家庭裁判所調査官による調査

離婚調停において子の親権が争われる場合、家庭裁判所調査官(以下、「調査官」といいます。)による調査が行われることになります。

調査官は、親の監護能力や、子の生活状況、子の意向などについて調査します。

調査方法は、まず、親の生活状況や収入状況、健康状態などを記載した「親権に関する陳述書」や、家の間取り等の資料を両当事者から提出してもらいます。

その上で、面接での調査、家庭訪問、子の学校や保育園の調査などを行います。

これらの調査を行った上で、調査官は、調査結果をまとめた調査報告書を作成します。

調査報告書は、親権の判断において重要な参考資料となります。