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交通事故の法律コラム

交通事故の裁判(訴訟)の流れ

2023年07月26日

交通事故の被害に遭った!弁護士や裁判は必要?

交通事故の被害に遭った場合、問題となるのが加害者に対する損害賠償請求の手続きです。

加害者が任意保険に入っている場合、加害者側の保険会社が損害賠償の対応をすることになります。

しかしながら、相手保険会社が妥当な損害賠償をしてくれるとは限りません。

特に怪我の慰謝料については、その保険会社の基準で損害賠償額を提示することが多いため、本来支払われるべき十分な損害賠償がなされません。

したがって、交通事故の被害に遭って怪我をした際には、弁護士へ相談することをお勧めします。

そして、その際には弁護士費用が問題となるため、まずはご自身の自動車保険やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付帯されていないかどうかを確認しましょう。

弁護士に依頼した場合、弁護士は相手保険会社との示談交渉を行うのが通常です。

しかしながら、交渉がまとまらない場合、裁判を起こして決着をつけるという流れになります。

裁判の手続きはどんな風に進む?

裁判で解決することとなった場合、概ね以下のような流れになります。

第一審の判決までの流れになります。

①裁判を起こす準備(訴状作成や証拠収集)

②裁判の申し立て(訴状や証拠書類の提出)

③第1回口頭弁論期日の指定

(「口頭弁論期日」などの期日には、当事者双方が出席し、当事者の主張内容などを明らかにしますが、通常は事前に主張内容を記載した書面を提出しますので、提出書面の確認や、裁判の進行方針の確認にとどまることが多いです。)

④被告側から答弁書等の提出

⑤第1回口頭弁論期日

⑥口頭弁論期日や弁論準備手続期日などの期日の定期的な開催

各期日の間で当事者から主張反論書面や証拠書類の提出

⑦双方の主張反論が概ね尽きたタイミングで、裁判所から和解案の提示

⑧和解が成立しない場合、当事者尋問や証人尋問

⑨尋問終了後、場合によっては再度和解協議

⑩やはり和解が成立しない場合、判決

(当事者双方のいずれかが控訴をした場合、引き続き、控訴審の手続きに移ることになります。)

裁判にはどのくらいの時間がかかる?裁判所に行かなければならない?

前述の①から⑩までにかかる時間はケースバイケースですが、1年以上かかることも多いのではないかと思われます。

⑦のタイミングで和解が成立する場合、もう少し早く終結することもありますが、それでも数ヶ月間を要します。

したがって、一般の方の感覚からすると、裁判にはかなりの時間がかかると考えておくのが無難かもしれません。

前述の③で記載したとおり、裁判の期日には当事者双方が出席するのが原則になりますが、弁護士に依頼すれば、弁護士だけが出席すればよいということになります。

交通事故の裁判を自分で起こすという方は稀であるため、通常は弁護士に依頼し、弁護士に期日の対応や書類の作成をしてもらいます。

他方で、⑧の当事者尋問の期日の際には、当事者ご本人にも裁判所へ出廷してもらう必要があります。

「当事者尋問」とは、裁判所の法廷において、当事者ご本人が自分の体験した事実関係を話してもらう手続きです。

自由に話すのではなく、双方の弁護士や裁判官からの質問に答えるという形式で話してもらうことになります。

この当事者尋問が実施される場合、当事者ご本人は、弁護士と打ち合わせをしたり、裁判所の法廷に立ったりする必要があります。


交通事故の被害で治療中。その後の流れはどうなる?

2022年05月02日

加害者側の保険会社による治療費対応は途中で打ち切りが打診される?

交通事故の被害に遭い、入院や通院をしている時、加害者側の任意保険会社が治療費の支払い対応をしていることが多いと思われます。

もっとも、このような支払い対応はいつまでも続くわけではありません。

十分な治療を終えたタイミングや、これ以上治療をしても症状が変わらないというタイミング(これを「症状固定」といいます。)で、保険会社から治療費の支払い打ち切りの打診がなされることがあります。

この場合、納得して治療を終えられれば問題ありませんが、必要十分な治療を終えていないにもかかわらず、保険会社に治療費の対応をしてもらえないと困った事態になります。

 

後遺症の判断や慰謝料の支払いは?

治療との関係で、後遺症の判断や慰謝料支払いのタイミングはどうなるのでしょうか。

後遺症は、「治療を続けても治らない症状」のことを言いますので、後遺症が残っているかどうかの判断は、症状固定後のタイミングになります。

慰謝料についても、治療期間や頻度を踏まえた上で算定されるため、やはり治療期間中ではなく、症状固定後に慰謝料に関する示談交渉が行われることになります。

そして、後遺障害診断についても示談交渉についても、加害者側の保険会社から案内があったり、金額の提示書面が送られてきたりしますが、必ずしも妥当な内容とは限りませんので注意が必要です。

弁護士への相談はするべき?まずは弁護士費用特約を要チェック!

上記のとおり、納得のいかないタイミングで保険会社に治療対応を打ち切られることがあります。

また、保険会社から慰謝料などの金額提示がなされたものの、妥当な内容かどうか分からないことが多いと思われます。

さらに、後遺症の有無や内容の審査について、必ずしも保険会社に任せきりにしない方が良いと考えられるケースもあります。

そして、これらの結論が若干変わるだけでも損害賠償金が数十万円、場合によっては数百万円変わることがあります。

したがって、適切な損害賠償をしてもらうためにはしっかりと対応する必要がありますが、自分で対応するのは難しいと思われます。

自分に代わって相手保険会社に対する窓口となり、交渉や訴訟の対応をしてくれる専門家が弁護士になります。

自分の代理人として全面的に対応を任せることができるのは弁護士だけになります。

もっとも、その場合、弁護士へ法律相談をしたり、依頼をするための費用が問題になります。

そこで注目したいのが、自分に適用される弁護士費用特約が無いかどうかです。

弁護士費用特約とは、弁護士への相談費用や依頼費用を保険会社が支払ってくれる保険であり、自動車保険などに特約として付帯されていることがあります。

そして、弁護士費用特約のある自動車保険を自分が契約していなくとも、配偶者や同居の親族が加入する自動車保険の弁護士費用特約を使えることがあります。

さらには、未婚の方であれば別居する親の弁護士費用特約を使うことができたり、自分の自動車でなくとも、搭乗していた自動車に付いていた弁護士費用特約を使うこともできたりしますので、人身事故に遭った時には使える弁護士費用特約が無いかどうかを必ずチェックしましょう。

また、仮に弁護士費用特約を使えない場合であっても、上記のとおり、弁護士の介入の有無で損害賠償金が大きく変わることが多いため、人身事故の被害に遭った場合にはまずは弁護士へ相談だけでもした方が良いでしょう。

当事務所では、人身事故の被害に遭い、加害者側の任意保険会社が対応中の場合、初回無料相談(弁護士費用特約を使えない場合)を実施していますので、まずは法律相談の予約をご検討ください。

また、交通事故について10年以上の豊富な対応経験を有する弁護士が相談に応じますので、安心してご相談ください。

さらに、zoomミーティングを用いたビデオ電話での法律相談にも対応できますので、札幌市から遠方の方であってもご遠慮なく当事務所までお問い合わせください。


交通事故で重傷被害を負った時に適正な賠償をしてもらうためには

2020年04月24日

まずは加害者側が自動車保険に加入しているかの確認

交通事故に遭って怪我を負った場合、損害賠償をしっかりと対応してもらえるかどうかは、加害者側の自動車保険への加入状況がまずは重要になります。

自動車保険には、法律で加入が義務付けられている自賠責保険と、自賠責保険では足りない部分を補う任意保険の2種類があります。

加害者が自賠責保険に加入しているものの、任意保険には加入していない場合、自賠責保険で受けられる賠償の金額は「自賠責基準」と呼ばれる低い基準で算定された金額になります。

加害者が自賠責保険にすら加入していない場合も、政府保障事業という制度を活用し、自賠責基準の補償を受けることは可能です。

加害者が任意保険に加入している場合には、通常、任意保険会社の担当者が被害者への対応を行います。

そして、任意保険は自賠責保険では足りない部分を補う保険であることから、自賠責基準を上回る損害賠償を期待することができます。

もっとも、後述のとおり、加害者が任意保険に加入しているからといって、納得のいく損害賠償をしてもらえるとは限りません

 

後遺症が残る可能性を考える

交通事故で負った怪我が重傷の場合、治療を続けても後遺症が残ってしまう可能性があります。

例えば、骨折や脱臼の怪我を負った場合、以前よりも足が曲がらない、腕を上げられないなど、可動域が制限されてしまう後遺症が残ることがあります。

後遺症が認められるかどうか、認められるとしてもどのような後遺症が認定されるかによって、慰謝料などの損害賠償金の金額は大きく変わってきます。

したがって、後遺症が残る場合、適正な後遺症の認定を得ることが重要となります。

 

重い怪我であるほど弁護士の活用を検討するべき

怪我が重傷である場合、慰謝料などの損害額も大きなものになります。

したがって、加害者側にはしっかりと損害賠償に応じてもらう必要がありますが、前述の任意保険に加入している場合であっても、いわゆる「任意保険基準」の損害賠償金が提示されることが通常です。

「任意保険基準」とは、任意保険会社独自の基準であり、裁判において基準とされる「裁判基準」の損害賠償金よりも低い基準です。

最も高額の「裁判基準」による損害賠償をしてもらうためには、被害者が弁護士を立てる必要があります。

弁護士が「裁判基準」による示談交渉を行うことにより、「任意保険基準」の倍額以上の損害賠償金額になることも珍しくありません。

また、適正な後遺症を認定してもらうために、弁護士のサポートが重要になることもあります。

交通事故で負った怪我が重傷であるほど、弁護士を立てるか否かによって生じる損害賠償金の差額は大きくなるのです。

したがって、交通事故で負った怪我が重傷の場合、弁護士の活用を必ず検討するべきといえます。


交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットとは?

2019年07月17日

被害者が示談交渉を自分で対応することは可能か?

交通事故に遭って怪我をしたとき、必ず対応しなければならないのが示談交渉です。

加害者側は保険会社の担当者が対応していても、被害者は自分で示談について対応しなければなりません。

それでは、被害者が示談交渉を自分で対応することは可能なのでしょうか。

「示談交渉」と言っても、基本的な手続きとしては、「承諾書」などのタイトルで損害賠償の金額が記載された書類に署名押印すれば、示談手続きは完了となります。

しかしながら、損害賠償金額の内訳には、怪我に対する慰謝料や、仕事を休んだことに対する休業損害などが記載されていますが、これらが妥当な金額であるか否かの判断には、専門的な知識が必要になります。

そして、特に重要なこととしては、怪我に対する慰謝料などは、弁護士が介入する場合に比べて、低額の提示がなされていることがほとんどであるということです。

したがって、自分で示談交渉の対応をすることができたとしても、本来支払われるべき損害賠償金額よりも低額になってしまう可能性が非常に高いのです。

 

まずは弁護士費用特約が使えるかどうかを確認!

本来支払われるべき損害賠償金額を求めるため、弁護士への依頼を検討して頂きたいところですが、この時、懸念されるのが弁護士費用のことであると思います。

そこで、まずは是非ともご確認頂きたいのが、ご自身の自動車保険に弁護士費用特約が付いているか否かという点です。

弁護士費用特約を利用することができれば、原則として、法律相談料や弁護士費用についての自己負担無しで、弁護士に依頼することが可能になります。

大事なこととしては、ご自身の自動車保険に限らず、例えば、妻や夫の自動車保険、同居の親族の自動車保険、さらには、別居している親の自動車保険に付いている弁護士費用特約も利用可能という点です(もっとも、保険商品は様々であり、変化する可能性もありますので、利用可能か否かは各保険会社へご確認ください)。

弁護士費用特約を利用してひとまず弁護士に法律相談に乗ってもらい、弁護士に依頼するか否かは追って検討するということも可能であるため、まずはお気軽にご相談ください。

 

むち打ち症の場合も弁護士に相談を

交通事故の被害に遭った場合、最も多い怪我が頚椎捻挫や腰椎捻挫などのいわゆるむち打ち症です。

例えば、赤信号などで停車しているときに、後方から車両に追突された場合、むち打ち症が生じることが多いでしょう。

通常、しばらく通院を続けた後、通院を終了し、相手の保険会社担当者から示談に関する書類が届くという流れになります。

このような場合、「このくらいの怪我であれば弁護士に相談する必要は無いのではないか。」と思われるかもしれません。

しかしながら、本来支払われるべき損害賠償金額よりも、数十万円以上低い金額で提示されていることが多くあります。

したがって、弁護士費用特約を利用可能であれば、安易に示談に応じるのではなく、まずは弁護士への法律相談だけでも予約されることを強くお勧めいたします。


北海道の方が交通事故に遭ったときの相談先

2018年07月13日

交通事故で怪我をしたときは弁護士への相談を選択肢に入れよう

交通事故が起きた場合、まず警察に届け出て、救急車を呼び、その後保険会社や保険代理店へ連絡するということが一般的であると思います。

その後、被害者は、加害者側の保険会社の担当者とやりとりをすることになります。

それでは、このようなやりとりをする中で、弁護士に相談する被害者の方はどのくらいいるでしょうか。

加害者側は、保険会社が示談代行で対応します。

しかし、被害者側は、自分で加害者側の保険会社とやりとりをしなければなりません

被害者が家族や友人に相談するということはよくあると思いますが、弁護士への相談を選択する方は少ないかもしれません。

しかしながら、交通事故で怪我を負った場合や、さらには後遺症まで残るような大怪我であった場合、損害賠償金は大きな問題となります。

法律の専門家であり、代理人として保険会社と交渉することができる弁護士への相談を必ず検討しましょう。

 

 

弁護士に相談するときの北海道特有の問題

いざ弁護士へ相談しようという時、札幌市内にお住まいであれば、近くに法律事務所はたくさんあると思います。

しかしながら、北海道内で都市部から離れた場所に住んでいる方は、近くの法律事務所を探すことはなかなか難しいかもしれません。

交通事故で大きな怪我をし、遠出をすることが困難な状態であれば、遠方の法律事務所へ赴くことは大変な苦労になってしまいます。

「北海道はでっかいどう」などという言葉もありますが、北海道はとても広いため、移動距離が長いという北海道特有の問題が、弁護士へ相談する上で支障となってしまいます。

当事務所では、海道内全域へ弁護士による出張相談に対応いたします。

交通費のご負担は頂きますが、後遺障害等級の認定を受けている場合など、出張日当や相談料を無料とさせて頂ける場合がございますので、まずはお気軽に当事務所までお問い合わせください。

また、後述の弁護士費用特約により、弁護士の出張相談について、出張日当や交通費の全てを保険で賄えることもあります。

 

弁護士費用特約の確認は必須

交通事故の被害に遭った場合、必ずご確認頂きたいのが「弁護士費用特約」の適用が無いかどうかです。

弁護士費用特約とは、交通事故の被害に遭った時、弁護士に相談する際に発生した法律相談費用や、弁護士に示談交渉や訴訟を依頼する際に発生した弁護士費用を保険会社が補償してくれるという内容の、自動車保険の特約です。

前述の出張日当や交通費についても保険会社が負担してくれます。

弁護士費用特約を利用することにより、ほとんどのケースにおいて弁護士費用を自己負担しなくても済むことになります。

また、弁護士費用特約を利用しても、自動車保険の保険料が上がってしまうということもありません(もっとも、保険の約款内容は様々ですので、念のため、保険会社や保険代理店にご確認ください)。

弁護士費用特約について見落としがちなのは、自分が入っている自動車保険以外でも、弁護士費用特約を利用できる場合があるという点です。

例えば、自分の自動車保険に弁護士費用特約が付いていなくとも、同居している親族の自動車保険に付いている弁護士費用特約を利用できることがあります。

未婚の方の場合、親と同居していなくとも、実家に住む親の自動車保険に付いている弁護士費用特約を利用できるということもあります。

利用できる弁護士費用特約が無いかどうか、交通事故の被害に遭った時には必ず確認されることをお勧めします。

 

 

適切な解決をするための弁護士への依頼

弁護士に依頼するというと、「そこまで大ごとにしたくない」「クレームをつけるようで気が引ける」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、弁護士への依頼は、適切な解決をするための手段であり、決して不当に揉めごとを起こす行為ではありません。

したがって、適切な解決を望んでおられるのであれば、堂々と弁護士に依頼すれば良いのです。

また、自分で保険会社の担当者と交渉をすることにより、精神的に疲弊してしまう方もたくさんいらっしゃいます。

交渉の窓口になってもらいたいという理由で弁護士に依頼しても良いのです。

「通院の打ち切りを言い渡されたけれども、後遺症が残りそうで不安だな」「賠償案の提示がされたけれども、このまま示談しても良いのだろうか」「保険会社とやりとりをするのが疲れた」などの悩みを抱えておられる皆様、当事務所の弁護士へどうぞお気軽にご相談ください。


交通事故の過失割合はどのように決まる?

2016年10月28日

交通事故の過失割合はどのように決まる?

交通事故の被害に遭ったとき、しばしば争点となるのが過失割合です。

自分の運転にはどこにも過失なんて無かったと思っていたところ、相手の保険会社から一定の過失を主張されてしまい、とても納得いかないというご相談はよくあるケースです。

それでは、交通事故での過失割合はどのようにして決まるのでしょうか。 この記事では、裁判所や弁護士、保険会社がどのようにして過失割合について判断するのかにつき、ご説明します。

 

過失割合を決める基準となる本

過失割合を決める上で、「別冊判例タイムズ38 全訂5版」(以下、「別冊判例タイムズ」といいます。)という本が基準となります。なお、2016年現在で5版なので、今後も改版される可能性があります。

この本は東京地方裁判所の裁判官が議論を重ねて作成されたものであり、裁判所や弁護士、保険会社が過失割合を判断する上で基準とするものになっています。

内容としては、様々な事故の類型を列挙し、各事故類型における基本的な過失割合が記載されています。

そこで、交通事故での過失割合を決める上で、当該交通事故が別冊判例タイムズ上のどの事故類型に当てはまるかを検討することが出発点となります。

 

過失割合を決める上での修正要素

別冊判例タイムズ上のいずれかの事故類型に該当するとしても、そこに掲載されている基本割合が、そのまま過失割合として認定されるとは限りません。

別冊判例タイムズには、基本割合だけでなく、修正要素も記載されています。

したがって、例えば、速度違反や合図なし、夜間、その他の著しい過失などの各事情により、基本割合が修正される可能性があるのです。

また、そもそも判例タイムズ記載の事故類型にそのまま当てはまらないというケースもあるので、その場合は、基本割合をそのまま当てはめるのも妥当でない可能性があります。

以上のとおり、交通事故での過失割合を決めるにあたっては、基準となるものがありますが、実際に発生する交通事故の個別事情は様々です。

自分自身で過失割合を判断するのは難しく、リスクを伴いますので、一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

 


交通事故による休業損害の算定方法

2016年08月18日

交通事故による休業損害の算定方法

休業損害とは、交通事故に遭い、治療や療養のために仕事を休業したこと、あるいは十分に仕事ができなかったことによる損害を指します。

自賠責保険の基準では、原則として1日5700円に休業日数を掛けた金額が、休業損害となります。

もっとも、自賠責保険の基準を超えて休業損害が発生するケースは当然考えられますので、裁判で認められる休業損害はどのようにして算定されるのか、以下、収入形態別にご説明します。

 

給与所得者の休業損害

給与所得者については、交通事故に遭う前3か月の給与を平均して基礎収入日額を算出し、これに休業日数を掛けて休業損害を算定するのが一般的です。

この給与には住宅手当などの各種手当を含み、所得税や住民税など税金を控除しない金額で算定します。

また、休業によって賞与が減額となったという事情がある場合は、賞与の減額証明書などを会社に発行してもらうことにより、この点の休業損害を立証できる可能性があります。 なお、3か月ではなく、年間の給与を基礎として休業損害を算定した裁判例もあります。

 

自営業者(個人事業主)の休業損害

現実に収入の減少があった場合に、休業損害が認められます。

交通事故に遭う前に自営業者の収入は、原則として、事故の前年の確定申告書によって認定されます。

過少申告などによって、実際は確定申告書以上の収入を事故前に得ていたという場合も、信用性の高い証拠によってそれを立証しない限り、確定申告書以上の収入があったとは認められません。

また、休業しているにもかかわらず、事業の維持のためにやむを得ず発生する家賃などの固定費については、休業損害に含まれます。

 

会社役員の休業損害

会社役員の場合、役員報酬が収入となりますが、給与とは異なり、休業したからといって必ずしも役員報酬が減額するわけではありません。

また、一口に会社役員と言っても、サラリーマン役員というような労働の対価として役員報酬を得ている場合もあれば、同族会社における利益配当的な役員報酬を得ている役員の場合もあります。

休業損害の算定にあたっては、それぞれの事案の個別具体的な事情を踏まえた上で、役員報酬のうち、労務提供の対価としての性質を有する部分はどの程度かを判断することになります。

 

家事従事者の休業損害

家事労働に従事する方の場合、賃金センサスという日本の平均賃金を算出したものがありますが、この賃金センサスの女子平均賃金をもとに、休業損害を算出するのが通常です。

家事労働に従事する方というのは、他の人のために従事する方を指しますので、一人暮らしの場合は原則として認められません。

家事と共に仕事をしているいわゆる兼業主婦の方の場合は、収入が賃金センサスを超える場合、その現実の収入をもとに休業損害を請求することができます。

 

失業者の休業損害

そもそも交通事故に遭う前から収入を得ていない以上、原則として休業損害は発生しません。 もっとも、労働能力や労働意欲があり、状況からみて収入を得ることになる蓋然性が高い場合、休業損害が認められる可能性があります。

具体的には、就職の内定が出ている場合や、内定までは出ていないものの就職活動中であった場合などが考えられます。

 


交通事故に遭った時に弁護士へ依頼するタイミング

2016年08月12日

交通事故に遭った時に弁護士へ依頼するタイミング

交通事故に遭って怪我を負った時、どのタイミングで弁護士へ相談し、依頼するべきでしょうか。 弁護士というとなかなか敷居が高いように感じてしまうかもしれませんが、誤った対応をしてしまう前に相談することは重要です。

また、経済的メリットだけでなく、精神的負担を軽減することができる可能性もあります。 以下、交通事故に遭った後のそれぞれの段階において、弁護士に相談・依頼するメリットをご説明します。

 

交通事故に遭った直後・治療中の段階

交通事故に遭った直後、あるいはその後の治療中に弁護士に相談、依頼するメリットとして、まず、治療等に関する疑問や今後の対応について早期段階から専門的アドバイスをもらうことができるという点があります。

どういう症状であるのかなどについて早期に弁護士に把握してもらい、治療や休業損害などに関する専門的なアドバイスを得られます。これにより、場合によっては最終的な損害賠償額にも影響を及ぼす可能性があります。

また、保険会社との交渉窓口になってもらうことができるという点を挙げることができます。 加害者側は示談代行として保険会社が窓口となりますが、被害者側は自分自身で対応しなければなりません。

このこと自体にとても精神的な負担を感じる被害者の方は多くいらっしゃいます。 そんな時、弁護士への依頼によって、保険会社とのやりとりを全て弁護士に任せることができます。

 

症状固定が近づいてきた段階

治療を続けていくと、保険会社からの治療費打ち切りの打診などがなされます。 この時、弁護士に相談することによって、症状固定の時期が不合理でないか否かなどについて、適切なアドバイスを得ることができます。

また、症状固定とする場合も、損害賠償請求において重要な、後遺障害に関するアドバイスなどを得られる点も、弁護士に相談する大きなメリットです。

 

後遺障害に関する等級認定結果が出た後の段階

後遺障害に関して等級認定の結果に不服がある場合、異議を申し立てる手続きを検討することになります。

異議申立ては、書面の提出によって行いますが、自分自身で手続きを行うよりも、交通事故と法的書面作成のプロフェッショナルである弁護士に手続きを依頼することを検討するのがよいと考えられます。

 

保険会社から示談案が提示された段階

自分自身で示談を成立させた場合、一度成立した示談をひっくり返すのはまずもって不可能となります。

したがって、安易に示談する前に、弁護士に相談することを強くお勧めします。

また、弁護士が交渉することにより、損害賠償額が大きく増額する可能性は非常に高いです。

さらに、訴訟(裁判)で争うことも視野に入れるのであれば、弁護士に任せるのが無難といえるでしょう。

 

まとめ

以上が、交通事故に遭った際に弁護士へ依頼するタイミングに関するご説明ですが、早期段階であればあるほど、上述のメリットを多く受けることができます。

したがって、一般的には、できるだけ早期に弁護士へ依頼する方がメリットが大きいといえるでしょう。

 

当事務所では、事故直後の段階から、初回相談料無料で交通事故に関する法律相談をお受けしております。また、無料出張相談も実施しております。 まずはお気軽にお問い合わせください。


交通事故における後遺障害と等級認定手続き

2016年07月15日

交通事故における後遺障害と等級認定手続き

交通事故に遭った後の示談交渉などで、争点となることが多いのが後遺障害についてです。

後遺障害の有無や程度はどのようにして決まり、損害賠償の金額にどのように影響してくるのか、以下、ご説明します。

 

損害賠償金額への影響

後遺障害とは、いわゆる後遺症のことを指すと考えて差し支えありませんが、後遺障害の内容によって損害賠償金額が大きく変動するため、後遺障害は後述の等級認定手続きにより、ある程度判断基準が統一化され、等級による区別がなされています。

後遺障害の有無は、損害賠償金額の算定に大きな影響を与えます。

後遺障害が残存する場合、後遺障害慰謝料と、後遺障害逸失利益が発生するためです。

後遺障害の程度や、その人について将来見込まれる収益の多寡にもよりますが、一般的に、後遺障害が残存する場合は、残存しない場合と比べて損害賠償金がかなり高額となります。

そのため、被害者にとっては、症状固定後、後遺障害が残存すると評価されるか否かは、大きな問題となるのです。

 

後遺障害に関しての等級認定手続き

後遺障害の有無や程度については、等級認定の手続きというものが行われます。

これは、加害者側の自賠責保険会社において手続きを行うものですが、実際上の認定手続きは、損害保険料算出機構というところで行われます。

保険会社用の毎月の診断書やレントゲンなどに基づいて判断されることになりますが、重要な判断資料として、後遺障害診断書があります。

後遺障害診断書は、症状固定となった時に、主治医に記載してもらう診断書であり、症状固定時の検査結果や症状の他、入通院期間や実通院日数なども記載されます。

症状の記載漏れや、検査結果の漏れが無いよう、主治医に記載してもらう必要があります。

等級は一番軽いもので14級、一番重いもので1級という基準で認定され、複数箇所について等級が認定される場合もあります。

このような自賠責保険会社の等級認定結果に対しては、異議申立ての手続きを行うことが可能です。

異議申立てを行うべきか否かについては、弁護士に一度相談してみても良いでしょう。 なお、等級認定結果は、訴訟において重要な判断要素となりますが、裁判所は必ずしも自賠責保険会社の等級認定結果に従うわけではありません。

 


人身事故に遭った後の治療と症状固定

2016年07月07日

人身事故に遭った後の治療と症状固定

交通事故で怪我を負った場合、怪我の治療のため、当然のことながら入院や通院をする必要があります。

例えば、こちら側の過失が0で怪我を負った場合、加害者側の任意保険会社とやりとりしながら治療を続けていくこととなります。

この場合、任意保険会社から直接病院に対して治療費の支払いが行われるのが通常ですが、治療はいつまで続けることができるのでしょうか。

また、医師による治療以外の治療方法を選ぶことはできるのでしょうか。

 

整骨院や接骨院、鍼灸などの利用

交通事故で負った怪我の治療は、整形外科への通院により行われることが多いですが、整骨院や鍼灸などを利用したいという場合も多いです。

注意点としては、これらの利用が損害賠償の対象として必ずしも当然に認められるわけではないということです。

整骨院や鍼灸を利用することが有効かつ相当であり、特に医師の指示がある場合などは、損害賠償の対象として実務上認められる傾向にあります。

医師の指示が必ず必要というわけではありませんが、医師の指示無く利用する際には、損害賠償の対象とならないリスクに注意しなければなりません。

さらに、カイロプラクティックやマッサージなどの利用についても、その有効性や相当性について注意する必要があります。

 

治療はいつまでも続けることができる?

しばらく通院を続けると、保険会社から治療の終了を打診されることがあります。

その際の説明において使われる言葉が、「症状固定」という用語です。 症状固定とは、治療を続けてもこれ以上良くはならないという状態のことをいいます。

症状固定の時期としては、事故に遭った時から6か月というのが一つの目安とされることが多いですが、あくまで目安であり、必ずしも6か月で症状固定とするのが相当とは限りません。

被害者の方から弁護士に対してよく質問されるのは、「症状固定で治療終了になると、その後の賠償は何も無いのですか?」というものです。

症状固定後は、通院したとしても、治療費について保険会社から病院へ直接支払われることはありませんし、後から治療費を請求することも原則としてできません。

それでは、症状固定後のことについて何も賠償がなされないのかというと、そうではありません。

症状固定時にも障害が残っており、これが後遺障害に当たる場合、後遺障害に対する賠償がなされます。

後遺障害に対する賠償は主に、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益です。 後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことに対する精神的損害に対する賠償です。

後遺障害逸失利益は、後遺障害を負ったことにより、得られたはずの収入を得られなくなったことに対する賠償です。

症状固定時期の妥当性が争点になることはありますが、症状固定とすることが被害者にとって必ずしも不利になるわけではないのです。

 


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